サドル師が停戦条件を提示

2008.3.31



 まったく奇妙な戦いです。日曜日にワシントン・ポストが米軍の地上部隊がイラク軍に合流し、英軍が砲兵隊で支援砲火を開始したと報じました。サドル師は同じ日にイラク政府を「独裁者」のように振る舞っていると批判し、政府の武装解除の要求を無視しろと支持者に命じました。ところが、そのすぐ後に、サドル師は方針を転じました。

 military.comによると、イラク政府が拘留している戦士を釈放し、サドル師の兵士たちに恩赦を与えることを条件に戦いを止めると宣言しました。この声明をイラク政府が評価したという報道もあります。これには驚きました。マリキ首相の鼻息は荒く、強気な発言をしていたことも報じられています。しかし、今年行われる選挙のライバルを攻撃しようとしているのではないかという疑問が、彼には投げかけられています。もちろん、彼はそれを否定しています。

 サドル師の声明の後も暴力事件は続いています。戦闘は終結したのではなく、サドル師から休戦の条件が提示された段階なのが正確なところです。イラク軍・警察も攻撃を終わらせたわけではありません。サドル師は声明の中でイラク軍を「暗闇の軍隊」と評しました。これまでの数ヶ月、数百のサドル師支持者が拘束され、数千が逃亡を余儀なくされました。そうした人たちが元の生活に戻れるようにするのが停戦条件のひとつです。マリキ首相と国防大臣はマハディ軍の勢力を過小評価していたことを認めました。そのために行き詰まり、むしろサドル師の停戦条件に助けられたように見えます。
 
 イラク政府はサドル師の提案に乗るかも知れません。それは、サドル支持者を増やし、彼の一派の議席を増やすことになるでしょうが、やむを得ないと考えるかも知れません。そうしないと、この騒動を終わらせることができないからです。そして、それはイラク軍・警察のレベルが未だに十分でないことを証明します。そうなれば、予想外の展開とはいえ、悪い結果を生むという予想の範疇に収まったことになります。予想以上に、イラクの状況には変化がないのかも知れません。

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