米軍レポート:自爆犯の人物像

2008.3.17



 イラクで数百人の米兵を含む10,000人もの人びとを殺害した自爆犯は、一族から見放され、自身の存在を示すために決死の覚悟を決めた者であることが米軍の研究により明らかになったと、military.comが報じました。この研究は48人の自爆志願者の尋問に基づいています。

 研究によると、自爆犯の多くはサウジアラビアのような国外から来ました。アルカイダから奪った記録によれば、40%がリビアやアルジェリアのような北アフリカ諸国、41パーセントがサウジアラビアの出身です。彼らはアルカイダによって常に補充されます。大半はスンニ派のイスラム信者で、年齢は18〜30歳、平均年齢は22歳です(スンニ派が多いのは、もともと、スンニ派がイスラム信者の主流派で、人数が多いためでしょう)。独身で子供がいない男性で、学生またはタクシー運転手から建設、小売業などのブルーカラー族です。6年から12年の学校教育を受け、大学教育を受けた者は少数です。家族は貧困層か中流で、6〜8人の兄弟がいます。こうした大家族においては、構成員は彼らから離れて有名になる道を探し、彼らを一族の中で際立たせる方法を与える聖戦に参加すると、研究の要約は書いています。

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 この研究で明らかになったのは、孤独な若者が自爆犯になっているということです。妻や子供を持たない若者は、気兼ねすることなく自爆に走りやすいのです。そのきっかけは、西欧に対する憎悪を持つことにあります。記事には、イラクやアブグレイブ刑務所での虐待がその主要な理由であると書かれています。以前から、アメリカはイスラム信者から嫌われる傾向にありました。それは、アメリカがイスラエルを支持し、パレスチナ人が住む場所を奪ったことを発端としています。さらに、歴史的には十字軍遠征の怨恨という理由があります。文化的にも、相手に対して丁寧な態度をとるイスラム信者は、アメリカ人のやり方は不作法にしか見えないという理由があります。不幸にして、両者は行き違いが起こりやすい環境にあります。

 米政府がやるべきことは、こうした問題に正面から取り組み、パレスチナ問題をはじめとする諸問題を長期間をかけて解決していくことにあります。ところが、外交に無知なブッシュ大統領は、最悪の選択をしました。和解の正反対のことを実行したのです。さらに、外交問題の指南役として着任したコンドリーザ・ライスは最適任者であったにも関わらず、大統領を適切に指導せず、常に彼の判断を支持しました。

 ブッシュ大統領のお陰で、米政府には極めて重たい決断が迫れています。将来、イスラム信者との和解が実現するとしても、そのためにはイラク侵略以降に米軍が行ったことのすべてを、大統領が公式に謝罪する必要があるのです。国家に貢献し、命まで落とした米兵士の行為を否定しなければ問題は解決しません。これは米国内で強い反発を生みます。米国民は「ならぬ堪忍、するが堪忍」を学ぶ必要があります。憎悪が常に闘争の原因であることを悟り、口を閉じるべきなのです。

 共和党の大統領候補ジョン・マケイン議員は、未だにこうしたことを理解せず、11月の選挙前にテロ組織がアメリカを攻撃する可能性を示唆し、military.comがそれを報じています。彼はこれまで何度も対テロ戦に対する考えを変え、一貫した考えを述べたことがありません。今回の発言も大した証拠はなく、彼の個人的な観測に過ぎません。

 日本のメディアの中には、民主党の候補者が決まらないことを共和党有利と見る人がいますが、これは誤りです。語るべき話がなくなってしまった共和党は不利な立場になったのです。メディアは民主党の候補者争いを連日報じています。報じるべき事柄がないためにマケインの出番は減り、人びとの関心はバラック・オバマとヒラリー・クリントンに向いています。911テロの後、ブッシュ大統領がメディアに盛んに登場するようになると、低かった彼の支持率は90%に跳ね上がりました。メディアでの露出度は支持率に大きな関連性があるのです。民主党の候補者がどちらに決まっても、大統領選挙が始まれば民主党候補を米国民が支持するのは疑いようがありません。

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