シリアの密入国ルートは健在

2008.3.13



 military.comによると、シリア政府の努力にも関わらず、90%の外国人戦士がシリア国境を越えてイラクに入国し、イランのシーア派戦士への支援はイラクに治安に重大な危機をもたらしています。

 依然としてシリア国内に外国人戦士の隠れ家と後方支援が存在します。イラク政府によれば、数ヶ月前に150人の外国人およびイラク人戦士がシリアからイラクに侵入し、イラク北部で少なくも38人を殺害し、200人以上を負傷させた事件に関与しました。入国する武装勢力の総数は記事には載っていません。国防総省は、昨年12月から2月の間に起きた出来事を分析し、シリア政府がイラクへの乗り継ぎ地点としてシリアを利用するテロリストを処遇する戦略的な決断をしたかは明らかではないとしています。また、イランの革命防衛隊のエリート部隊・クッズフォース(The Quds Force)は依然として多くの爆弾を武装勢力に供給しています。

 この記事には他の情報もたくさん載っていますが、関係のある事柄だけに絞って書きます。

 イラク戦争の初期、米軍はシリア国境を有するアンバル州で何度も掃討作戦を繰り返しました。当初、ほとんど成果をあげなかったものの、その後、このルートを使って侵入する武装勢力は減ったとされました。さらに、アンバル州の部族が米軍と協力するようになったため、シリアルートはほとんど意味をなさなくなったと考えられてきました。ところが、このルートは未だに健在だというのです。イラン経由で侵入するのは残りの10%だというのでしょうか。アンバル州のどこかに、入国する戦士を手助けする者がいるのです。また、シリアがテロリストを援助している可能性は、私はかなり高いと感じています。以前から、シリアがイラクに行こうとするテロリストを監視しているという話には一定の疑惑を感じていました。

 長大な国境線をすべて監視することはできません。また、シリア政府も完全に信頼できないことを考えると、この記事は現状をよく言い表しているのかも知れません。クラウゼヴィッツは、敵の抵抗を不可能にすることが作戦の目的だといいました。現在のイラク戦のように、相手がどこにでも逃げられるような戦い方では、戦いを終わらせることはできず、いつまでも続くということです。だから、現状が2003年当時と大して変わらないということになるわけです。

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