清徳丸事件:お粗末な防衛省の事情聴取

2008.3.5



 時事通信によれば、防衛庁が「あたご」の航海長から事情聴取をする際、防衛省幹部は航海長が午前4時まで当直だったことを知らず、漁船の緑灯を視認した4時5分以降の状況しか聞いていませんでした。

 防衛の専門家たちが雁首を揃えて、基本的な情報の確認をしていなかったというお粗末です。3日付の記事で、防衛庁が発表した事故状況の内容は極めて不自然だと書きましたが、どうやらこれが原因のようです。おそらく、レーダーが2隻だけしか探知できなかったというのは4時5分以降の話で、航海長が当直だった時間帯では正常に探知していたのでしょう。しかし、その時点の状況は海保が取り調べを始めたために防衛省は聞いていないのだと考えられます。

 これで謎がかなり解けた気がします。引き継ぎの内容に問題があり、交代した隊員たちが漁船群に対して十分な注意を払わず、危険を認識する前に衝突が起きたのが真相かも知れません。なぜ、交代した隊員がレーダーで探知できなかったのかは分かりませんが、引き継ぎからまもなく衝突が起きていることから、レーダー上で周囲の状況を把握する前に事故が起きたのかも知れません。

 もう、防衛省の情報はどうでもよくなりました。彼らは情報を隠蔽しているのではなく「知らない」のです。真相はこの事件の海難審判に関する報道で明らかになるはずです。

 それにしても、海自のやり方は「戦争の霧」という言葉を忘れているとしか思えません。状況は常にすべて見えるわけではなく、見えない部分が常に存在します。それを意識せずに見えているものだけで状況を判断し、行動すると落とし穴に落ちるのです。それを忘れて、航海長の報告を疑問を持たずに聞いていたのです。これは衝撃的な事実です。

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