米統幕議長が米軍のストレスを認める

2008.2.7



 military.comによれば、米軍の統合参謀本部議長マイケル・マレン海軍大将(Adm. Michael Mullen)は、イラクとアフガニスタンの戦闘で、米軍が強いストレス下にあることを上院軍事委員会で認めました。

 しかし、この議会での発言は来年度の予算にからんでいるようです。陸軍は兼ねての計画により7,000人を増員し、総員532,400人へ。海兵隊は5,000人を増やして、総員194,000人にします。そのために、軍は205億ドルを必要としています。これにより、現在15ヶ月の派遣期間を従来の12ヶ月に減らし、再派兵までの期間を現在の1年間から2年間にできるのです。海兵隊は派遣期間が7ヶ月で、再派遣までの帰還は14ヶ月なのが基本です。10月に始まる2009年会計年度のために、米軍は5,883億ドルを要求しています。

 当然、民主党などからの反発は強く、マレン大将は米軍が強いストレス下にあることを認めるという捨て身の作戦に出ているわけです。ストレスをためこんでいる兵士を助けてくださいと言われれば、誰だって弱いわけですが、要は予算獲得のために問題をダシにつかっているだけです。民主党のジム・ウェッブ上院議員は軍事予算の透明度を求めていますが、ゲーツ国防長官は今年の秋にイラクに兵士が何人いるかは分からないのだから、現実的な見積もりはほとんど不可能であると反論しています。彼は最も面白いことを述べています。「国防総省は世界で最も大きなスーパータンカーのようなものです。急旋回したり、スキフ(一人乗りの小型平底船のこと)のように操縦することはできないのです」。「急旋回」のところで十セント硬貨を意味する言葉を含む「turn on a dime」という表現を使ったのは、予算にからむ議論に引っかけたつもりなのでしょうか。

 それから、ワシントン・ポストによると、イラクで第二位の指揮官レイモンド・オディエルノ中将(Lt. Gen. Raymond T. Odierno)は副参謀長に指名されました。今年の夏にはペンタゴンに戻る見込みです。イラク戦に参加した軍人は出世も早いわけで、これは自衛隊も同じです。戦争で中心的な役割を演じた軍人は、次の時代の軍を担うのです。

 military.comは、イラク北部の状況についても伝えています。バグダッド北西ジャジーラ(Jazeerah)の合同墓地で50体の遺体が発見されました。ジャジーラはサマラ(Samarra)の15マイル西にあるサーザー湖(Lake Tharthar)の近くにあり、この湖周辺の合同墓地ではここ数ヶ月の間に約200体の遺体が発見されています。

 サーザー湖周辺はアルカイダが支配しており、一部の遺体はひどく腐敗しており、数ヶ月前に埋められたと考えられています。今年初めまではアルカイダが支配していた地域です。アルカイダが邪魔者を消したのだと考えられますが、掃討されたアルカイダの現状がどうなのかが気になります。

 昨年12月には23人にまで落ち込んだ米軍の戦死者は、1月は40人へと約2倍に増加しました。今月はまだ1人ですが、この数は現在もっと増えているはずです。月末までにどうなるかが気になります。対テロ戦争はいよいよ様相が見えにくくなっています。2003年の頃に比べると、どんどん事態は不明瞭になっています。

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