バグダッドの自爆犯は女性2名

2008.2.2
修正 同日11:50 pm


 バグダッドで久しぶりに大規模な自爆テロが行われました。今回もまた自爆犯は女性で、それも二人で十分間の時間を置いて自爆したという周到なものでした。

 ワシントン・ポストによれば、最初の事件は過去2年間に4回のテロ攻撃を受けることになったバグダッドで最大の家畜市場でした。二番目の自爆テロは5マイル離れた市場で起こりました。最初の爆発は午前10時40分に起こり、その5分後に二回目の爆発が起こりました。

 イラク警察は58人が死亡、172人が負傷と発表しましたが、米軍は27が死亡、50人以上が負傷と発表しました。国内メディアの報道を見ると、この数字はその後さらに増加しています。現場がシーア派居住区であり、二人の自爆犯とも自爆ベストを着用していたことから、アルカイダ系スンニ派組織の関与が疑われます。現場の模様が記事に書かれていますが、首や腕がない死体が散乱し、燦々たる状況のようです。

 ふたつの現場の間の距離が8キロ程度なら、二番目の自爆犯にも爆発音は聞こえたはずです。それでも臆せずに自爆したのなら、よほどの決意による犯行と考えなければなりません。女性が自爆することが続くのは、やはり何か変化が起きていると考えざるを得ません。女性が不満を溜め込んで、自爆テロに至るのなら、そこには相当な問題が横たわっていると考えるべきです。イラクの治安は沈静化したのではなく、別の形に変化したと考えた方がよいのかも知れません。それが今後の中東情勢にどういう変化を与えるのかが気になります。


 以上の記事を書いた後で、自爆犯が知的障害者だったという報道があるのを知り、いくつかのニュースを確認しました。BBCのニュースでは、このことが明確に書かれていました。ところが、ワシントン・ポストの記事とは、事件現場を除いてかなりの食い違いがあります。

名 称
事 件
場 所
時 刻
死者数
負傷者数
WP
一回目
al-Ghazil market
10:40 am
58

(27)

172

(50)

二回目
the Jadida area of east Baghdad
10:45 am
BBC
一回目
the Ghazil animal market
10:20 am
46
80
二回目
the Jadida area of east Baghdad
10:40 am
27
67
死者数、負傷者数はいずれも最低値
カッコ内は米軍発表

 ワシントン・ポストは死傷者数を混同しているらしく、BBCの2回目の爆発の死傷者数とふたつの事件の値が近似しています。これについては、BBCの方が正確なのかも知れません。時刻については、5分間の間隔なのに、記事中には十分間の間隔と書いており、私もそれに引っ張られて、十分間と書いてしまいました。こうした誤りがあることから、ワシントン・ポストの時刻の記述も信憑性に欠けると考えた方がよいかもしれません。ただ、BBCの記事にも書き間違いがあるように思えます。最初の事件現場を「carpet market」と書いていますが、二番目の事件現場を「pet market」と書いています。別のところでは「two animal markets」と書いているということは、「carpet」は「pet」の誤記かも知れません。しかし、ワシントン・ポストの記事には、最初の現場はかつては絨毯市場(weavers market)だったとも書いてあります。もっとも、こうした不可解な記述はいつものことです。ふたつの市場が、家畜市場というよりはペットの市場であったことは間違いありません。猿や熱帯魚も扱う市場であったとのことです。

 女性が知的障害者であるというのは、イラク軍報道官の発言です。両方の市場の関係者やお客が、かねてから二人の女性が市場に来ているのを目撃していたことから当事者が特定されたというのです。これは信憑性の高い情報です。しかし、そうだとすれば、テロリストは攻撃のためには、女性に触れて爆弾ベストを取りつけたのかという疑問が湧きます。あるいは、女性のテロリストが爆弾ベストを装着したのでしょうか。知的障害だといっても、何の疑いも持たずにアバーヤを脱がされて爆弾を身につけさせられるものなのでしょうか。

 疑問は残りますが、発表が事実とすれば、心配すべきなのはシーア派がスンニ派に報復するためにテロ活動を再開することへと変わります。

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