マレン議長がアフガン増派を語る

2008.12.22



 国内でも報じられていますが、統合参謀本部議長マイケル・マレン海軍大将(Adm. Mike Mullen)が、アフガニスタンの兵数を、2009年夏までに最大で60,000人へ増員すると述べました。現在、アフガンには31,000人の米兵が駐留していますが、20,000〜30,000人を追加派遣する方針です。

 military.comによれば、現地指揮官はかねてより、20,000人の兵をカナダ軍と英軍を援助するために、カブールに隣接する2州に派遣するように求めていました。20,000人には航空部隊、医療部隊、民間の支援要員が含まれ、すべてが戦闘部隊なのではありません。マレン議長は記者会見で「我々は確実に戦闘において勝つために十分な兵力を持っているが、掃討した領域を維持するのに十分な部隊は持っていない」と述べました。また、マレン議長は、アメリカがアフガン政府に求めている影響力について誤認したことを認めました。アフガンは強力な中央政府を持ったことがなく、今後、州の共同体や部族により大きな役割を任せるかも知れないとも述べました。

 12日に紹介した記事に書かれていた4個戦闘旅団の増派が、さらに増えたのではなく、増派の全体像が説明されただけだということに注意が必要です。1個戦闘旅団は約3,500人がおり、4個旅団で14,000人程度です。これらを支援する航空部隊やその他の支援要員を含めると、状況によって20,000〜30,000人になるだろうということです。増派される2州とは、ヴァルダク州(Wardak)とローガル州(Logar・下の地図上では「Lowgar」)で、昨年、ヴァルダク州とローガル州には武装勢力が流入しました。来月、この2州に第10山岳師団が派遣される予定です。この記事を読むかぎりは掃討作戦後の警戒を強化することに狙いが定められているようです。しかし、これまでの経緯を見ると、タリバンは各地で戦闘を繰りひろげています。たとえば、南西部のヘルマンド州(Helmand)、西部のヘラート州(Herat)でもタリバンは活動してきました。これから配備する2州に兵を強化しても、他でタリバンが活動すれば、アフガンはいつまで経っても安定化は望めません。「テロが増えた地域に兵を増強して掃討作戦を行います」では、同じことが繰り返されるだけです。おまけに、今になって戦略の誤りを認めたのは、かなりショックです。また、戦略の転換が未だに行われておらず、これから始まるらしいことも、遅きに失した感があります。

 我々はこのことをよく記憶しておくべきです。軍人や安全保障関係の学者を沢山抱えるアメリカですら石頭ばかりで、容易に方向転換ができないのです。一端、道を間違えると、簡単に元に戻れない理由が、ここにあります。

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