舞水端里よりも大きい東倉洞基地

2008.11.6



 space-war.comによると、韓国の李相熹国防部長官(イ・サンヒ・Lee Sang-Hee)が、北朝鮮の東倉洞(トンチャンドン)ロケット基地は舞水端里(ムスダンリ)ロケット基地よりも大きなミサイルを発射でき、すでに8割方完成していると述べました。(kmzファイル・東倉洞舞水端里

 韓国の東亜日報は先月、北朝鮮が射程10,000kmの固体燃料型弾道ミサイルを開発中だと報じました。GlobalSecurity.orgのジョン・パイク代表(John Pike)は、この基地が信頼性のあるICBMを開発する能力を示していると主張します。なぜか記事の後半は脱北者の話で、ミサイルの話はあまり書かれていません。

 偵察衛星の情報から発射台のサイズを特定した結果が公表されたわけですが、例によって、偵察能力を秘匿するために、詳細は明らかにされませんでした。李長官は具体的な数値を記した報告書に基づいて話をしています。舞水端里の発射台については、GlobalSecurity.orgに掲載されている、チャールズ・ビック氏が書き起こした発射台の図で、その規模が分かります。東倉洞基地の発射台は、これよりは大きいというわけです。タワーがより高いとか、発射台がより大きければ、さらに大きなロケットを発射台に乗せて打ち上げることができます。ロケットのサイズからは、燃料の量が推定でき、そこから射程が推定されます。簡単に言うと、既存のロケットの構造や性能を元にして、サイズから射程を推定するわけです。射程10,000kmというのは、あくまで、こうして割り出された数字であり、実際にそれだけ飛ぶかどうかは、実際に発射されるまでは分かりません。

 しかし、この記事で気になるのは、固体燃料のロケットを開発しているということです。これが、1段機体に使えるものであれば、重大な脅威となります。固体式ロケットは短時間の準備で発射でき、推力も液体燃料式に比べると大きく、弾道ミサイルには向いているのです。固体式は開発は容易といいますが、製造段階でバラツキが出やすく、液体式よりも高価、制御が液体式よりも難しい、量産効果が出にくい、などの問題があります。果たして、北朝鮮にそんなエンジンが開発できるかは疑問です。北朝鮮が固体エンジンの地上燃焼実験をおなったという情報はありませんから、完成度はかなり低いのが現状でしょう。テポドン2号の打ち上げ失敗が、エンジンの連動にあったことを考えると、より制御が難しい固体式ロケットを北朝鮮が作るのは難しそうです。

 来年春までに東倉洞基地が完成し、夏には打ち上げが可能になる見込みです。今回は南に向けて打ち上げられ、日本上空は飛ばないので、日本のメディアが何と報じるかが気になります。テポドン2号は日本上空を通過するはずでしたが、東倉洞からは南に向けて打ち上げられるため、日本は通過しません。「北朝鮮が日本を狙っている」という、国内メディアが好きな筋書きは使えません。ニュースバリューが低いということで、マスコミは苦労しそうです。今度は、どこを狙った、と言うつもりなのかが気になります。


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