現代のバルジの戦い:敵は身中にあり

2008.11.28



 military.comが、イラクにいる米兵の知られざる戦いについて書いています。兵士たちはアルカイダだけでなく、体重の増加という敵とも戦っています。

 第二次世界大戦時のまずい戦闘糧食「Kレーション」は過去のものです。いまや、米兵の食事はバイキング形式です。好きな食べ物を選んで、好きなだけ食べられます。

 メニューをあげると…バーベキュー・リブ、フライド・チキン、ロース・ステーキ、ロブスター、カニ、ロースト・ターキー、チーズバーガー、フライド・ポテト、オニオン・リング、エッグ・ロール、エビのから揚げ、手羽フライ、チリ料理、クレープ、パンケーキ、オムレツ、ワッフル、ブリトー、タコス、 ケサディージャ 、キッシュ、ベーコン、ポーリッシュ・ソーセージ、ローストポーク、コーンビーフのハッシュ、ミルクセーキとスムージー…などは手始めです。食堂には、パスターバー、サラダバー、サンドウィッチバーがあります。デザートにはリンゴと洋なし、その他の果物を選択できます。さらに… キャロット・ケーキ、チョコレート・ケーキ、イチゴ・チーズケーキ、ブラックフォレスト・チョコレートケーキ、デビルズ・チョコレートケーキ、バナナ・ナッツケーキ、アップル・パイ、チェリー・パイ、チョコレートとバニラのプディング、3種類のクッキー、3種類のアイスクリーム、コーンと棒付きのアイスキャンデー、すべてのトッピング付きのサーティワン・アイスクリーム…があります。間食も自由にでき、そのメニューも書いてありますが省略します。

 この結果、米兵たちは体重の増加という、贅沢な悩みにつきまとわれています。記事のタイトルにある「バルジの戦い(Battle of the Bulge)」は、第二次世界大戦の有名な戦いを指す言葉です。ドイツ軍の最後の反撃で、前線がバルジ状(出っ張りのこと)になったことからつけられた名称です。現代においては、腹の出っ張りを指すというわけです。あまりにも太ると、厳しいダイエットを強制されたり、陸軍から除籍される恐れがあります。そこで兵士たちは身体トレーニングに励んでいるとか。

 軍においては、食事は兵士の楽しみの一つで、軍も士気を高めるためにできるだけ美味しいものを用意しようとします。万一、最前線の兵士が劣悪な食事を強いられていると、アメリカ本土に知られると、非難が湧き起こるためです。愛国心を発揮しようとする民間企業からも、食材の提供がなされる場合もあります。最前線での食事が劣悪なのが歴史的に当たり前でした。数百年前まで、小麦粉を水で溶いて、たき火であぶるといった、原始的な食事が普通でした。戦闘糧食は最前線にいる兵士が携帯でき、直ぐに食べられるようにした調理済みの食品ですが、後方の基地ではコックが作った美味しい食事を食べられます。その中間に位置し、簡単に暖められる大人数用の食事のセットもあり、これは戦闘糧食よりは美味しいようです。ところが、イラクの場合、兵士は多くの場合で基地内で食事を取ります。このため、兵士は常に美味しい食事にありつけるのです。

 こういう環境に、ストレスを食べて解消する癖のある人が放り込まれると、大変なことになりそうです。しかし、なんとも贅沢な悩みです。こうした食事は現地でも調達されますが、燃費の悪い軍用機で空輸されています。そのコストは大変なものでしょう。

 銃後の人びとは、兵士にできるだけのことをすることが愛国心だと考えます。しかし、実際には兵士を危険にさらして、太らせているわけです。戦争は案外、こんなおかしなことで組み立てられています。


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