ペラルタ軍曹が名誉勲章をもらえない訳

2008.11.21



 以前に紹介した、ラファエル・ペラルタ3等軍曹(Sgt. Rafael Peralta)に名誉勲章が与えられなかった問題(記事はこちら)について、military.comが続報を報じました。

 それによると、米国防総省は改めてペラルタ3等軍曹に名誉勲章を与えないという決定を確認しました。仲間を救うために手榴弾の爆発を自分の体で防いだ兵士に対して、最高の勲章が贈られない理由が明らかになりました。ペラルタ軍曹は家宅捜索の最中に、頭部に銃弾を受けて倒れました。その後、手榴弾を抱え込んだ時にそれが爆発し、彼は死亡したのです。この行為が意識的に行われたことなのか、そうではないのかが問題とされたのです。病理学者が検討に参加したのは、彼の頭部の銃創からして、意識的な行動が可能だったかどうかが検討され、おそらく不可能であるということから、手榴弾を抱え込むという行動が偶然や無意識によるものだと考えられたのでしょう。

 しかし、ペラルタ3等軍曹の母親ローズ(Rose Peralta)は納得していません。ペラルタ家の弁護士は、専門家はラファエルの行動が意識的に行われた可能性を排除していないと主張します。彼は、ペラルタ軍曹の同僚が撮影したホームビデオを探しています。それがあれば、現場にいた人、手榴弾などすべてを確認できると言うのです。ペラルタ家はバラック・オバマが大統領に就任した後で、再び請願を出すつもりです。

 頭部の銃創がよほど酷く、人間がその状況で意識を保てるとは思えないという判断がくだされたようです。重傷を負った兵士が、近くに飛んできた手榴弾から味方を守る話は、数が多いわけではありませんが、確実に存在します。戦意高揚のための作り話と一笑に付す人もいます。確かに、それは一面で事実でしょう。しかし、現場の兵士がこうした行動を行うのは、訓練で行ったことを忠実に繰り返す、条件反射によるものだという意見もあります。これが戦意高揚のために利用されたのが実際のところでしょう。問題は、ペラルタ軍曹の負傷の程度なのでしょうが、そこまで詳細には報じられていません。脳の活動は未知の部分が多く、大きく損傷しても意識が保たれる場合もあります。科学の力でも、ペラルタ軍曹の行為が意図的に行われたものかどうかは証明できないでしょう。しかし、ペラルタ軍曹に意識があった場合、その功績を見落とすことになります。ペラルタ軍曹の名誉勲章は既成概念のクレパスの中に落ち込んでしまったのです。ホームビデオの存在が気になります。国防総省がそれをチェックしたかどうかが問題ですね。


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