ロシア軍が南オセチアとアブハジアから撤退

2008.10.6



 ワシントン・ポストによれば、グルジアに展開していたロシア軍が撤退を開始しました。国内マスコミが「緩衝地帯」と呼んだ、警備区域からロシア軍は撤退しますが、南オセチアとアブハジアに約8,000人のロシア軍が残留すると、ロシアは主張しています。

 先週金曜日、南オセチアの首都、ツンヒバリのロシア軍司令部で自動車爆弾が爆発して9人が死亡した事件がありました(記事はこちら)。撤退開始直前のことでしたが、撤退の約束は守られました。南オセチアの外側にあるグルジア軍の村ディッサ(Ditsa)でロシア軍に押収された自動車2台が、司令部に運ばれた後で、1台が爆発しました。爆発力はダイナマイト50ポンド分だったとされています。南オセチアの広報官は、遠隔操作で爆発させられたらしいと述べました。この日、南オセチアの地方高官が自動車爆弾で暗殺されそうになるという事件がありました。車は銃や手榴弾を運んでいた4人が逮捕された後で捕獲されました。ロシアとグルジアはお互いを非難しています。ロシア国防省は「意図的に計画されたテロ攻撃」と述べ、グルジアは停戦合意を無効にするための工作だと反発しました。

 遠隔操作で起爆したという証拠があるとは、記事には書かれていません。爆発の痕跡を調べれば、無線式の起爆装置が見つかるはずです。それが示されていないということは、この爆発が偶発的だった可能性を疑わせます。逮捕された4人が自動車爆弾を設置した者たちである可能性は高く、彼らが持っていた武器の中に直ぐに起爆できるものがあったのかも知れません。それを不用意に動かしたのかも、4人が逮捕される直前に意図的に起爆状態にしたのかも知れません。計画性は報道を見る限りでは考えにくいように思えます。逮捕の詳細は、国内報道ではほとんどが省略されており、この事件が陰謀だと考えている日本人は多いのではないでしょうか。

 かつてなら、ロシアはこの事件を理由にして、撤退を中止したでしょう。しかし、そうはなりませんでした。やはり、ロシアもこれ以上、ヨーロッパとの関係を悪くしたくないわけです。これが冷戦時代とは戦争の形が変わったという証拠です。以前から指摘しているように、ロシアがヨーロッパと全面対決をするような時代ではなくなったのです。大国の全面対決の相手はテロ組織に限られます。こうした変化を無視することは、戦争の行く末を見誤る原因となります。次は、今月中旬に行われる会議の中身に注目しましょう。


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