トルコとパキスタン、グルジアの最新状況

2008.10.27



 対テロ戦争の環境は急速に変化しています。イラク駐留米軍がクルド労働党(PKK)と戦うトルコを支援するために、レイモンド・オディエルノ大将(General Raymond Odierno)がトルコを訪問するなど、大きな変化が起きています。

 military.comによれば、オディエルノ大将はトルコ軍のハッサン・イグジス大将(General Hasan Igsiz)と会いました。米軍はトルコ軍に技術的な援助と情報の共有を約束しました。トルコ軍はイラク北部にいるPKKの兵数を2,000人程度と見積もっています。

 PKK.のテロ活動はあまり報じられないので、もっと別の情報源を探す必要があるかと感じています。実は、イラク北部の状況は大変気になっているところです。オディエルノ大将がトルコを訪問したということは、報じられていないテロ活動があって、その対策を講じる必要が出てきたのだと想像できます。

 また、military.comによると、パキスタン軍はアフガニスタン国境付近の武装勢力の拠点を制圧し、バジョール地域(Bajur・kmzファイルはこちら)の戦略地ロイサム(Loi Sam)を奪取し、そこに隠れている武装勢力を殺害しました。また、11人の武装勢力が政府側についたということです。8月以降の掃討作戦で、これまでに1,500人の武装勢力の容疑がかかった者たちを殺害し、73人のパキスタン兵が戦死しました。パキスタン軍は、この地域の居住地域が戦闘と砲爆撃により激しいダメージを受けました。しかし、具体的な数値は公表されていません。ワシントン・ポストは、避難民の数を20万人としていますが、30万人とする報道もあります。また、軍の非戦闘員の被害を95人としています。毎日新聞は避難民の数を300万人と報じていますが、これは桁を一つ多く書き間違えたのだと思われます。

 前から書いていますが、1,500人も敵を殺害し、友軍の被害がその10分の1なら大戦果です。PKKなら4分の3を殺害したのに等しい数字です。ところが、パキスタン政府は武装勢力と和解する方向へ方針を転換しました。普通、勝っている方は停戦を言い出さないものです。

 グルジアのアブハジアでテロ活動が活発化しています。先日、先日はロシア軍のヘリコプターが南オセチアでグルジア側を挑発して見せましたが、表立ってロシア軍が動くよりも、独立運動家にやらせた方がよいという判断がなされたようです。今後、独立運動を活発化させることで、ロシアの介入を正当化させようという動きが強まります。これに対して、NATOは早めに警告を発するべきです。

 毎日新聞は、パキスタン議会が方針を変更した理由を「アフガン政府が和解しているのに、わが国が戦闘に固執する必要はない」と報じています。これは戦国時代のパキスタンの発想ではなく、東京にいる新聞記者の発想です。本当の理由は、大量の避難民だと考えられます。軍の攻撃で地域が荒廃すれば、住民は政府に腹を立て、武装勢力に加担する危険が出てきます。テロが激化するのを避けるために、武装勢力とは和解して、荒廃した地域を再興するべきだと考えたのでしょう。


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