BW社が海賊対策に活路を見出す

2008.10.21



 世の中はなるようになるもので、military.comが民間軍事会社が海賊対策に関心を示していると報じました。

 ブラックウォーター社は、アデン湾で海賊から商船を守るためにパトロールをする船「マッカーサー号」をヴァージニア州のハンプトン水道にあるリトルクリーク海軍三軍共同基地(Little Creek Naval Amphibious Base)に置いています(kmzファイルはこちら)。すでに海運会社十社ほどに打診していますが、今のところ警備を依頼した会社はありません。しかし、同社は需要は確実にあると考えています。海賊事件の頻発で、海運の保険料は十倍も値上がりしているためです。評判の悪い警備業務から手を引き、訓練と航空輸送に力点を移したブラックウォーター社ですが、まだ警備業務に可能性があると信じているように見えます。

 マッカーサー号は、19世紀の水路測量技師を担当した海軍士官ウィリアム・ポープ・マッカーサーに船名を由来する調査船でしたが、ブラックウォーター社が2年前に買い取って改造しました。船にはヘリコプター発着場と偵察ヘリコプターMD-530「リトルバード」を2機収納する格納庫があります。14人の乗員の他、海軍特殊部隊シールズ出身の警備員と硬質のゴムボード4隻が搭載されます。

 MD-530の元の機種は陸上自衛隊でも使われているOH-6で、操縦士1人と乗員3人を乗せることができる小型ヘリです。兵士を乗っ取られた船に送り込むには、2機では6人しか運べません。突入はゴムボートで行い、ヘリコプターは主に上空から情報収集と支援攻撃を行うのだと想像できます。ヘリコプターが海賊が突入を妨害できないように、海賊が甲板に出るのを阻止して、その間に、警備員がゴムボートから船に乗り移るわけです。

 この装備だと、乗っ取りを阻止するのは無理です。たまたま、近くで事件が起きた時には駆けつけて海賊を追い払えるかも知れませんが、もっぱら事件が起きてから出番が来るという感じです。海賊が船を乗っ取ったことが明らかになり、居場所が分かった場合、出て行って突入するだけです。始終、アデン湾を巡回するとか、特定の船にくっついて警護するようなことはしないでしょう。仮に、海賊船を発見したとしても、彼らは高速船に乗り、銃器とロケット砲で武装しています。ゴムボートで接近して攻撃するのは、非常に危険です。それには船に備え付けの機関砲が必要です。

 しかし、NATOが海賊対策に乗り出すことを決めていることから、海運会社もしばらくは様子を見るでしょう。マッカーサー号では、NATOの艦船にできる乗っ取りの予防はできません。大金を払って民間軍事会社に救出作戦を依頼するよりは、NATOに予防してもらった方が安心というものです。多少は契約が取れるとしても、それほど多くにはならないはずです。


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