露専門家が日本のミサイル防衛を批判

2008.1.29



 spacewar.comが、最近の日本のミサイル防衛に関する記事を掲載しました。ノーボスチ・ロシア通信社の解説者ピョートル・ゴンチャロフ(Pyotr Goncharov)が書いた記事には、日本人が見過ごしがちの問題が含まれています。

 記事は、先日の「こんごう」によるSM3の発射実験、2011年春までに4隻のSM3を搭載したイージス艦を配備する計画、地上へのペイトリオットミサイル配備について説明しています。これらが北朝鮮の弾道ミサイルへの対処であることも紹介しています。しかし、ロシアと中国は北朝鮮よりもずっと多い弾道ミサイルを持っています。これが極東地域で軍拡競争を引き起こすとロシアと中国は考えます。しかし、東京は耳を塞いでいるとゴンチャロフ氏は批判します。ロシアはアメリカがヨーロッパに配備したミサイル防衛システムに対しては激しく批判をしていますが、その他の地域について同じことを主張する法的な根拠は持っていないと、彼は言います。

その理由として記事には、ミサイル防衛システムの数を制限したABM条約が引用されています。この条約はミサイル防衛システムを制限することで、核兵器の脅威を抑制しようというものでした。ミサイル防衛システムを制限すれば、核戦争が起きた時に甚大な被害が出ることは明らかです。そのため、締結国は核戦略の分野で積極的な軍拡を行わなくなるというアイデアなのです。もちろん、ゴンチャロフ氏は日本がABM条約に参加していないことは承知しています。しかし、日本に再考を促したいと考えています。

 ゴンチャロフ氏の要望に日本が応えることがないのは確定的です。すでに、日本のミサイル防衛構想は走り出しているからです。もう誰に求められません。日本政府のすべての書類には、ミサイル防衛は北朝鮮の脅威を減らし、日本をより安全にすると書かれることが決まっているわけです。これに反対することには、事実上、いかなる意味もないという際まできています。

 ここで、石破茂防衛大臣が、自著の中や様々な場所で、ミサイル防衛は純粋に防衛的な装備であり、どの国にも脅威を与えることはないと主張していることを思い出して欲しいと思います。これは核戦略に関する歴史を無視した発言でしかありません。

 みなさんに気が付いて欲しいのは、ミサイル防衛について考える時に必要なのは、ここ数年に発売されたミサイル関連書(ミサイルの性能ばかりが並んだ本)ではなく、過去の核戦略に関する事柄が書かれた、すでに古本屋に積まれている本であるということです。つまり、核戦略とその制限交渉に関する本に注目すべきだということなのです。


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