スパコンでIED探知を

2008.1.24



 military.comによると、米軍はIED対策にスーパーコンピュータを使う方法を研究しています。ミシシッピ州とルイジアナ州の州境の近くで、米国防総省で二番目にパワフルな「クレイXT3」がフル稼働しています。

 航空機や無人偵察機が撮影した電子光学式、赤外線式の映像を解析することで、映像から地形を分析する自動標的認識アルゴリズム(ATR)は、マンホールと地雷を区別し、低木と爆弾を見分けるといいます。

 半世紀前は航空写真しかなかったことを考えると、これは大変な進歩です。熟練した分析官が写真から敵の配備を読み取るのではなく、コンピュータが解析するのです。以前に航空機にセンサーを積んで、IEDを探知する方法が研究されているという報道がありました。どうやってIEDを探知するのかについては明確な説明がなかったと記憶しますが、それが今回報じられた事だったのかも知れません。単に映像のパターンで地形を解析するのではなく、植物が発する湿気も分析することで、より詳細な解析ができるようになっているようです。

 しかし、気になるのは、こうした解析方法には誤りがつきものだということです。記事によると、あるケースで誤報を75パーセントまで認識できたということですが、おそらくこれは最大値でしょう。4分の1も誤報が出るのでは、戦闘情報としては心許ないというレベルです。記事には分析した地形の映像らしいものが掲載されているものの、何の説明もないし、サイズが小さすぎてはっきりと分かりません。この映像から、どこにIEDがあったのかを解析したという写真ではありません。現状で、本当に地面に埋まっているIEDを見つけられるのかは、この記事からは分かりません。

 また、プログラム開発の非効率性を考えると、いつ実用化されるのかも不明です。実戦への投入はもっと先でしょう。しかし、完成すればIEDの探知だけでなく、戦闘にも応用できるかも知れません。コンピュータ技術の進歩を考えると、可能性を否定することはできません。地図に「ここは森です」と書かれているだけよりも、どの程度の高さだとか、枝振りまで正確に分かるのなら、十分に使えるでしょう。国防総省のスパコンではなく、軍団レベルなどの部隊レベルで、もっと小規模なコンピュータで分析できるようになる必要もあります。


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