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イラク増派継続とペトラエス大将の書簡

2007.9.8



 military.comによれば、デビッド・ペトラエス大将がボストン・グローブ紙に、イラク増派の成果と展望を発表しました。いよいよ今月行われる議会報告の地ならしが始まったようです。

 ペトラエス大将は、春からの増派について若干の成果があったとして、増派した部隊をそのまま配備し続けることを望んでいます。先日、ペトラエス大将とクロッカー大使は、ブッシュ大統領に現在のイラク戦略を続けるよう勧告した模様です。APECサミットに出席中のブッシュ大統領は、イラク政策は指揮官の勧告に基づいて決断すると、従来の見解を繰り返しました。これらは非常に危険な情報です。外交防衛問題にまったく無知な大統領が大使と大将からこう言われたら、自分の方針に確信を持ってしまうに違いありません。私は9月には米軍がイラク戦略に見切りをつけると考えていましたが、彼らはまだ辛抱を続けるつもりのようです。「なせばなる」式の軍人教育がそうさせるのでしょう。

 また、ペトラエス大将はイラク多国籍軍の将兵と職員に対して、以下のような手紙を発し、その内容を公開しました(テキストはこちら。pdfファイルはこちら)。全訳を作成する時間がないので要点だけ書きます。要するに、イラクでは部分的に増派の成果があがっているので、この状態をさらに続けたいと言っているだけです。過去11週間中の8週間でイラク全土のテロ攻撃の頻度が減ったとか、地域の指導者が米軍に協力するようになったとか、アンバル州で成果があがっているとか、小さな成果が並んでいるだけです。イラク軍の整備が遅れているといった、米軍の撤退に重要な事柄は触れられていません。

 ペトラエス大将はいわゆる「学校秀才」であり、真の指揮官の器ではないと評せます。軍人は学校教育の極致で育成され、しばしば型にはまった考え方しかできない人を生みます。こうした人たちが軍に増えると腹をくくった大胆な活動は消え失せ、消極的な観察主義に陥ります。アルカイダにとって、これは好都合な話で、米軍が意味のない軍事作戦をだらだらと続け、労せずして攻撃のチャンスが増すというわけです。イラク侵攻以降、胆力を感じさせてくれる米軍指揮官を見たことがありません。むしろ、下級兵士の奮闘が時々見られるだけです。この9月はアメリカにとって「絶望の始まり」となる公算が高いと、私は考えます。

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