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米軍がイラク首都南部の治安の回復を主張

2007.9.5



 military.comが今年1月からの増派の成果を報じました。しかし、その内容は疑問で、提灯記事の感があります。まもなく行われる議会報告のために軍がメディアにアピール攻勢をかけているのかも知れません。

 治安の向上が見られた場所というのは、バグダッド南方にあるアラブ・ジャボア(Arab Jabour)で、6月中旬に第3歩兵師団第2旅団が到着する前は「死のトライアングル」として知られていました。それが8月にはテロ攻撃が4分の1にまでに減ったとペトラエス大将が述べました。警戒基地マーレーはこの地区からバグダッドへ向かう唯一の舗装道路上にあり、未舗装道路のほとんどは閉鎖されました。このため、武装勢力がバグダッドへ向かうことが困難になったというのです。しかし、イラク全土で見ると、8月の米軍の戦死者は76人(globalsecurity.org 調べ)、民間人の戦死者は1,674人(icasualties.org 調べ)で、最高値ではないものの、高い値を示しています。やはり、武装勢力は場所を移動して、活動していると見るべきです。イラク全体を常に監視するような態勢はアメリカ一国では不可能です。暴力事件が止まっていない証拠として、12歳の男子の頭部が道路の真ん中に置かれた事件が記事に書かれています。少年の父親が米軍に協力したことへの報復が行われたのです。

 これで議会報告の内容が大体予測できたという気がします。駐イ米大使館と米軍は部分的な増派の成果を報告し、その継続を求めることになるでしょう。来年3〜4月まで増派が続くことになる可能性が極めて高いと言えます。日本のマスコミはここ数日、撤退の可能性を書いています。これは劇的な展開に送れととりたくないと考えるマスコミの性質みたいなもので、客観的な予測とは違います。マスコミは、特定の時点で何が最も劇的な展開かを予測します。現段階では、ブッシュ大統領が撤退に向けて大きく舵を切ることが最も劇的です。可能性としてはほとんどあり得なくても、劇的な展開が少しでもあると考えられるのなら、少しでも早くにそれを書いておきたいという心理が働きます。そこで、こうした記事が踊ることになるわけです。同時多発テロの後、すぐに米軍がアフガニスタンを空爆するという報道が流れたのは、その好例です。客観的観察では、その時点ではまだ空爆目標のリストすらできていないと考えられました。当時、いつ米軍がアフガニスタンを空爆するかが最も劇的展開だったのです。

 客観的な観察ではイラクの治安はほとんど回復しておらず、ブッシュ大統領が撤退を考えているという証拠は一つもありません。彼が言っているのは「イラクの治安が安定したら撤退する」ということで、前提条件が達成できる見込みが立っていないというのが客観的観察です。

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