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歴史の教訓に学ばない日米の指導者

2007.8.24



 安倍晋三総理大臣がインドを訪問して、故パール判事の息子プロシャント・パール氏と面会しました。パール判事は「被告全員は無罪」と主張したことで知られる人です。相変わらず安倍総理は何も学んでいないと思いました。

 確かにパール判事は無罪論を主張しました。このことが日本ではパール判事が侵略戦争を肯定したと誤解されています。パール判事は法律が過去に遡って裁けない原則を指摘しただけであり、日本がアジアに領土を拡大したことは侵略戦争と断定しています。今では、パール判事の主張が正しいと広く認められています。しかし、日本にはパール判事の主張を利用して太平洋戦争を肯定しようとする勢力があり、安倍総理は彼らから支持されていることが知られています。さらに言えば、安倍総理の祖父岸信介氏は旧満州国で政府高官を務め、東条内閣の商工大臣だったためにA級戦犯に指定されています。しかし、アメリカは共産主義に対抗するために、一部の戦犯を不起訴処分にして反共主義に利用しました。このため岸氏は裁判を免れました。東条内閣の末期で終戦を了承しない東条と対立した点が買われたのかも知れません。岸氏はアメリカの期待に応えるように政治を取り仕切ったので、日本は右派と左派に別れた激しい対立の時代を迎えました。安倍氏がパール判事の遺族に面会するのはこうした事情に無関係ではないと考えられます。

 同じく歴史に学べない人が太平洋の向こう側にいます。ジョージ・ブッシュ大統領はイラクから米軍が撤退したら「ボート・ピープル」「再教育キャンプ」と「キリング・フィールド」といったベトナム戦争で知られることが再燃すると言い、ベトナム政府から不快感を示されたのです。

 「再教育キャンプ」こそ存在しないけど、イラクではすでに大量の難民が出て、毎日テロ攻撃で人々が死傷しているのだから「ボート・ピープル」と「キリング・フィールド」はすでに現実化していると言いたくなります。しかし、ブッシュ大統領の話は真面目に検討する値もない、単なる言葉遊びに過ぎません。今になっても、このような演説しかできないところにブッシュ政権の軍事的無能が表れています。この演説には軍事的な考察が感じられません。いまやあらゆる軍事的手法が失敗に終わったというのに、打開策を示すのではなく、当たり前のことを表現を変えて繰り返すだけでは意味がありません。

 army-times.comによれば、陸軍に志願して2004年4月22日に味方の誤射で戦死したパット・ティルマンの妻マリーがアーカンソー大学に招かれて講演しました。現在、マリー氏は義理の兄姉アレックス・ガーウッド氏と共にパット・ティルマン財団を設立し、奨学金を提供しています。彼女はパットの人格のすばらしさを述べた上で、「パットが陸軍に入隊すると決めてから多くのことが変わりました。そして不幸にも、様々な分野の指導力が信じられなくなりました。私たちは社会、経済、政治、様々な分野で本物の指導力を必要としています」と述べました。これはパットの死因を遺族に正しく告知しなかった陸軍や国防総省、ブッシュ政権をも批判しているのだと言えます。愛国心を体現した人の妻にこう言われるのでは、ブッシュ政権も立場がありません。

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