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人権団体によるソマリア報告

2007.8.15



 人権団体ヒューマン・ライト・ウォッチ(Human Rights Watch)がソマリアでの戦争犯罪に関するレポートを公表しました。同団体のサイトでpdf版、HTML版の両方が提供されています。ここでは「要旨」を日本語化してご紹介します。

 これまで何度も国際社会のソマリアに対する無関心に対して警鐘を鳴らし、民間人の被害について指摘してきましたが、ヒューマン・ライト・ウォッチの見解もまさにそれと路線を同じくしていることには驚かざるを得ません。日本のメディアもこうした現状をもう少し報じるべきです。日本国民は情報途絶の状態に置かれています。



1.要旨

 2007年は16年の絶えることのない暴力で苦しんでいる何十万人にほとんど休息をもたらしませんでした。その代わり、連続した政治と軍の大変動が、1990年代初期以来見られなかった人権と人道の危機を生み出しました。

 2007年1月から、ソマリアの首都モガディシュの住民は、何百の民間人を殺傷し、何百という民間人に怪我をさせ、何年にも及ぶ最大で急速な人口の移動を引き起こし、何千という人々の人生、住居、生活手段を粉々にした暴力による恐ろしい軍事作戦戦役に捉えられました。 世界の大半から無視されていますが、これは人的損失がその地域的、国際的な重要性に匹敵する戦いです。

 2007年のモガディシュの戦いは、エチオピア人とソマリ人の政府軍と反政府グループの連合が関与しています。この戦いは、国際人道法の数多くの違反行為によって特徴づけられ、鍵となる主要な外国政府と国際組織の一部の恥ずべき沈黙と怠惰に直面しました。

 この報告で実証された戦争法の違反は、人口が密集した隣国における武装勢力の派遣、そしてエチオピア軍によるこれらの区域の広範囲にわたる、無差別な砲撃を含みます。これらの砲撃と犯意の証拠の計画的な性質は戦争犯罪の行為を強く示唆します。

 ソマリアにおける進展の基盤は、モガディシュにおける2006年中期の、聖(シャリア)法廷連合に基盤を置く運動であるイスラム法廷連合(ICU)の権力の飛躍的な台頭と急速な崩壊です。イスラム法廷は史上初の安定を無法状態と激しい暴力によって悩む都市にもたらしたと信じられました。ICUの過剰で圧倒的な活動がより穏健な政策へ発展するという初期の指標についての推測は続いて起きた出来事によってすぐに打ち切られました。

 ICUにいる少数の急進的で好戦的なイスラム主義者の分子とその戦闘的な声明は地域の内外で恐怖をかき立てました。ICUの支配は同じく、特にモガディシュで数少ない国際的支援と正当性を最小限にしか支持されていないソマリア暫定連邦政府(Somali Transitional Federal Government: TFG)を脅かしました。 2006年12月、ソマリアの歴史的なライバルであるエチオピアはTFGを支持し、アメリカ政府の後ろ盾を得てソマリアに介入し、数日でICUを追い出しました。 軍事活動は国際的テロリズムとの戦いの名の下に行われたものの、エチオピアの行動はそれ自身の地域と国家安全保障の利益、すなわちエリトリアとの代理戦争、エリトリアとICUの支援を受けたエチオピアの武力を持つ敵対者の動きへの懸念が起源です。

 2007年1月のモガディシュにおけるエチオピアとTFG軍のあと、モガディシュの住民は武装勢力がエチオピア・TFG軍とTFG当局者に対して規則的な連鎖攻撃を行うのを目撃しました。エチオピア軍は反撃として迫撃砲、ロケット砲、大砲をさらに発射しました。3月21日と22日のTFGによる武装解除作戦はTFG兵士が捕まり、1993年にモガディシュの通りで死体が損壊された米兵の死を喚起させるという結果を生みました。

 3月下旬、エチオピア軍はモガディシュのスタジアムと他の場所を獲得する最初の攻撃に着手し、反政府グループの広範な連合体の抵抗に遭遇しました。エチオピア軍は継続的なロケットによる爆撃と付近全域への砲撃を、機動力のある武装勢力を退却させたり、戦略拠点を占拠するための主要な戦略として用いました。 何百という民間人が逃げようとしたり、ロケットや砲弾が着弾した時に家に閉じこめられて死亡しました。何万人もの人々が街から逃げ出しました。

 4日間の激しい砲撃と戦闘が、エチオピア軍とハウイエ族(Hawiye)の長老の交渉による短い停戦によって終わりました。停戦は行き詰まり、4月下旬、エチオピア軍隊がモガディシュ北部でさらなる区域を獲得する2回目の攻勢に着手した時に破られました。再び、重砲の弾とロケット弾が人口が多い一般住民がいる付近の武装勢力に対して用いられました。 さらに何百もの人々が死傷しました。4月26日、エチオピア軍の軍事行動を支援するという名目上の役割を演じるTFGは勝利を宣言しました。 数日の内に武装勢力の攻撃は復活し、ますますエチオピア・TFG軍がリモートコントロールの爆発装置で狙われるようになりました。

 ヒューマン・ライト・ウォッチのケニヤとソマリアでの6週間の調査活動が集めた多数の目撃証言と6月と7月の引き続く聞き取りと調査に基づき、この報告書は紛争当事者のすべてによって使われた戦闘における非合法的な手段と手法とモガディシュにおける民間人の壊滅的な犠牲を実証します。

 武装勢力は規則的に部隊を民間人が密集する地域に派遣し、民間人を不必要な危険にさらす「ヒット・アンド・ラン」戦術を行って頻繁に迫撃砲弾を発射しました。武装勢力はおそらく意図的に民間人を攻撃から自分たちを守るために用いました。彼らは兵器を発射し、特に迫撃砲を、国民と軍事的目標を区別しない形で、TFGの文官を狙って攻撃しました。少なくとも一つの例で、武装勢力は拘留中の捕虜となった戦闘員を処刑し、死体を損壊しました。

 エチオピア軍は民間人の生命と財産の偶発的な損失を避けるために、攻撃目標が軍事的な目標であることを確認するのを怠るなどして、すべての実行可能な予防策をとることに失敗しました。エチオピア軍指揮官と将兵は、国際人道法に違反する戦闘の手段(本質的に無差別な「カチューシャ」ロケットを市街地で用いる)と戦闘の手法(迫撃砲やその他の間接砲撃兵器を誘導なしで市街地で用いる)をどちらも使いました。彼らは定期的に繰り返してロケット、迫撃砲、大砲を民間人や軍事目標を区別せず、民間人の損失を軍が期待する利益を越えて生じる方法で発射しました。人口密集地域での地域爆撃の使用と民間人への被害が判明した時に攻撃を止めるのに失敗したことは、戦争犯罪への関与を明示するのに必要な犯罪意図の証明です。エチオピア軍隊はまた、民間人に対する故意の攻撃、特に病院に対する攻撃を行ったと考えられます。彼らは病院の医療機器を含む民間人の財産の略奪を行いました。

 暫定連邦政府軍は、差し迫った軍事行動を民間人に警告する時に効果的な警告を行うのに失敗して、民間財産の広範囲な略奪を行い、人道的援助の配送に干渉しました。TFG保安部隊は大量の逮捕を行い、拘留者を虐待しました。

 これらの重大な国際犯罪への反応は沈黙と言ってもいい程度まで弱められてきました。2007年のモガディシュでの規模と悪習の重大さにもかかわらず、鍵となる政府あるいは機関は真剣に強い非難を行いませんでした。 何年間もソマリアに充満し、現在過去6カ月間に大きく拡大した人権危機は、未だに多くの国際的な活動家の協議事項に達しさえしていません。 ソマリアの民間人の苦しみを和らげることと安定状態を築くことは、人権の真空地帯の中で達成されるはずがありません。

 アメリカ、ヨーロッパ連合とその加盟国、アフリカ連合、アラブ連盟、国連安保理のような鍵となる政府と国際機関はソマリアで必要とされている人権保護と説明責任の緊急性を認識しなければなりません。

 国際的な援助資金供与者と活動家は、実行されてきた恐るべき犯罪を非難する迅速な行動を取り、すべての紛争当事者にこれらの犯罪の免責は容認されないという明確なシグナルをらなければなりません。アメリカとヨーロッパ連合は十分な財政的、技術的、そしてその他の援助をエチオピアとソマリアの暫定連邦政府に与え、その影響力を人権と国際人道法を順守するよう強く求めるために使うべきです。

 独立した人権モニタリングと報告が増やされ、国際的な援助資金供与者を、ソマリアの最近の暴力のサイクルの原因である悪習に対する責任を果たすために奨励し促進し、財政的な努力を行うべきです。

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