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歴史街道

「いおうとう」と「いおうじま」

2007.6.23



 軍事的には大した問題ではありませんが、気になる話が出てきたので、少し書きます。硫黄島の読み方が「いおうじま」から戦前の「いおうとう」へ変更されたことが、アメリカで困惑を引き起こしているという報道についてです。

 確かにワシントン・ポストには、硫黄島従軍経験者が不快感を示したと書かれています。しかし、米海兵隊向けメディアのmarinecorps timesに載った同じ記事の要約版は、もっと大人しいものにまとめられています。FOXテレビが「日本が歴史を書き換えた」とセンセーショナルに報じたとしても、気にする必要はありません。このテレビ局は保守系メディアの代表格で、強襲揚陸艦「IWO JIMA」の艦名を汚す事件として反発しているだけです。

 もともと硫黄島の読み方は「いおうとう」であり、これは中国語の読み方から来ているようです。朝鮮語では、独島は「どくと」、実尾島は「しるみど」と読みますが、この「と」と「ど」は「島」の部分に対応した発音です。日本語では、日本語の発音の「しま」「じま」を「島」にあてて読むようになったわけです。どちらも正しい読み方で、大島は「おおしま」、三宅島は「みやけじま」と読んでいます。硫黄島は元々「いおうとう」と呼ばれており、私もこの読み方で呼んできました。どちらも正式な読み方で、言葉の組み合わせが生む語感によって読み方が決まっているだけです。硫黄島と書く島は鹿児島県の大隅諸島にもあり、こちらは「いおうじま」と呼びます。日本語の読み方としては間違っていませんが、政府が定めた名称は「いおうとう」でした。でも、世間では「いおうじま」も通用していました。だから、「いおうじま」は非公式な呼び名だということになります。

 今回の名称変更は映画「硫黄島からの手紙」によって「いおうじま」という名称が一般的になったために、小笠原村が政府に請願したことで決まったといいます。だから、読み方を戻したのは正しい判断であったと言えます。

 ただ、ワシントン・ポストの記事には、信じがたいことも書かれています。「いおうじま」という名称は、島を要塞化するために配備された日本海軍の士官が読み違えたために定着したというのです。旧海軍は「いおうとう」という呼称を使っていたはずで、米海軍は最初から「IWO JIMA」と読んでいました。この記述の根拠を知りたいと思いました。

 余談ですが、この件でネットを検索したら、偶然「硫黄島からの手紙」で栗林中将が「士官」という言葉を使ったのは誤りだという意見を見つけました。陸軍は「将校」と言うはずだというのです。しかし、この方は「これだから士官学校出は始末が悪い」というセリフも引用しています(この引用は誤り。正確なセリフは「陸士あがりは、大概あんなものです」)。「士官学校」「陸士」は陸軍士官学校のことですから、自ら陸軍でも士官という言葉を使っていたことを証明してしまっています。時代考証の誤りをしてきたつもりで、自分が間違えることはよくあります。指摘する前に確認することが大事ですが、確認したつもりで間違えることも珍しくないのです。時代考証は本当に厄介です。

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