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歴史街道

帰還兵の25%がPTSDを発症

2007.6.18



 ワシントン・ポストがPTSDに関する長文の記事を掲載しました。前に、イラク侵攻はPTSDの研究を前進させると書いたことがあります。PTSDの研究は徐々に進んでおり、その観点から調査されることで、さらに新しいことが分かってくるはずです。

 記事によると、1999〜2004年にかけて、退役軍人のPTSDのための傷害補償金は150%、42億ドルに跳ね上がりました。この春までに、イラクとアフガニスタンの帰還兵のPTSD患者数は45,000人になりました。アメリカ心理学協会によると、イラクから帰還した陸軍と海兵隊の4分の1が精神的な問題を持っています。米陸軍の研究では、イラク帰還兵の12%が、不安、憂うつ、ストレスを持っていることが分かりました。記事はこれらの数字はごく一部を示しているに過ぎないといいます。PTSDの認定を得るには、兵士は戦友の死を目撃するとか、IEDによる攻撃を受けたことなど、トラウマになり得る事件を少なくとも一つ申し立てなければなりません。ところが、この基準は何千もの申し立てを却下するために機能しているというのです。PTSDはひとつの重大な事件だけでなく、ストレスが蓄積されることでも起きるのに、前者だけで判断するのは誤りなのです。また、これもすでにこのサイトで取り上げているのですが、治療にあたる医師が補充されるよりも遙かに早いペースで辞めるため、近年その数は450人から350人へ減ってしまいました。彼らが辞める理由は、兵士を治すことができないからです。このほかにも、様々な事例が記事には書かれていますが、引用はここまでにします。

 アメリカ心理学協会の調査ではPTSD患者数は25%なのに、陸軍の研究では12%というのは、いかに調査の方法によって数字が変わってしまうかということの証拠でしょう。

 かなりひどい数字が出たものだと思いますが、おそらく、これらよりも遙かに多くの悲劇が起きているはずです。退役軍人たちの受難は今後半世紀近くに渡って続きます。まだ戦争が続いているから、こうした情報は出にくい面があります。この種の問題を取り上げるのはネガティブだとみなされがちだからです。しかし間違いなく、将来、この問題はニュースや映画などでさらに大きく取り上げられるようになります。今回の戦争でPTSDが特別多く発生しているのではなく、過去の戦争では無視されてきたのだと考えるべきでしょう。人間はPTSDという問題を考えることを積極的に無視してきました。今後はもっと光を当て、こうした悲劇を少なくする必要があります。私は戦争を論じる上でPTSDを直視しない人を信じられません。

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