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好転しないイラクの治安

2007.6.14



 イラクの治安に関する報道がふたつあります。military.comによれば、ニコラス・バーンズ国務次官がCNNに、イラン政府はタリバンに武器を供与していると語りました。また、サマラにあるシーア派のふたつのモスクが武装勢力によって爆破されました。

 これまで米政府高官がイラン政府がタリバンへの武器供与に関与していると言ったことはありませんが、今回の発言は明確にイラン政府を指しています。イラン政府が革命防衛隊に指示して、武器をイラクに運び込んでいるというのです。いまのところ、具体的な証拠は示されていませんが、米政府から出ているイランへの非難が一層前進したことになります。イラクで使われている武器にイラン製の部品が使われていることはすでに分かっていましたが、イラン政府が直接関わっている証拠はないとされていたのです。だから、これらの避難はイランの核開発を牽制するための方便と見ることもできます。

 爆破されたモスクの内ひとつの尖塔は倒壊しました。死傷者はありませんでした。スンニ派武装勢力の犯行とされていますが、容疑者が逮捕されたものの、犯人かどうかは分かりません。また、この事件の報復と見られる放火がスンニ派モスクに対して起こりました。スンニ派とシーア派の憎悪は止むことがありません。米軍が試みている部族間の和解もおそらくは失敗するでしょう。もともと、これは最後まで努力したことを示すための言い訳作りです。

 以上ふたつの報道を見ても、本当の治安の混乱と、それとは関係のない外部の要因の組み合わせがよく分かります。アメリカがイラクを民主化しようとしても、隣国の事情を無視することはできません。スンニ派モスクに放火した奴もシーア派モスクを破壊したのが本当にスンニ派だとは分かっていないでしょう。しかし、ムジャヘディンは真犯人が見つかるまで待つことはなく、すぐに行動に移してしまいます。物事は予想を超えて複雑に発展するものです。軍事行動を起こす時は、こうしたことも含めて考えておく必要があるのです。アメリカはこれを見落として、戦力の分散を強いられているわけです。

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