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武装勢力との停戦交渉は成功するか?

2007.6.1



 military.comによると、5月の米兵の戦死者は少なくとも122人で、月間戦死者数で3番目を記録しました。同じ記事に西バグダッドの住民がアルカイダの銃撃を防ぐために米軍を呼んだと書かれています。

 アルカイダのメンバーは学生が試験を受けるのを妨害しようとして、人が外に出られないように無作為に発砲しました。住民の要請で米軍が出動し、激しい戦闘が行われたとのことです。結論から言って、アルカイダがやったことは無意味です。その場に留まって銃撃を続ければ米軍やイラク軍に捕捉され、掃討されるのは目に見えています。学校はその後に試験を実施するでしょうから、学校の授業を妨害するという目的は果たせません。目的と手段の合致を重視する西洋式軍事とは対極をなす手法であり、誰でも分かるようなこの理屈を無視して実際にやってしまうところにアルカイダの奇異があります。

 一方、レイモンド・オダルノ中将が、武装勢力と停戦について交渉中であることを明らかにしたという記事もあります。この交渉のために増派が機能しているかについて議会に報告する期限の9月には間に合わない可能性も、中将は示唆しました。彼は80%の部族を調停できると考えています。正直なところ、この調整が成功するとは考えにくいものがあります。スンニ派とシーア派の確執はマホメットの死後、しばらくしてから始まったといわれており、現在の治安の混乱を改善するという理由で解消できるものではないように思えます。さらに、イラン人やクルド人といった外部的な要因がからむと、誰にも解決できない問題のように思えてきます。また、中将の言に「それは始まったばかりなので、我々にはこの作業ですることが沢山あります」がありますが、こうした表現はイラク侵攻以降、何度も聞かされてきた言葉でもあります。新しい試みを始めたといった発表には、成果が示されないのが常です。そして、いつまで待っても成果は示されず、ガッカリさせられるのです。当面、成り行きを見守るしかないのでしょうが、期待したいとは思いません。理想的なのは、イラク国内の武装勢力とアルカイダの分離が進み、武装勢力がアルカイダに対抗するようになることです。しかし、このような絵に描いたような展開は過去の歴史から見ても考えにくく、実現は困難です。

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