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歴史街道

シンディー・シーハンが活動を休止

2007.5.30



 ブッシュ政権はアフリカのスーダンに経済制裁を科すと発表しましたが、時機を失した感じがしました。大量虐殺からすでにかなりの期間が経っています。military.comによると、そのブッシュ政権に対して、激しい怒りを表明してきたシンディー・シーハンは、バグダッドで戦死した兵士の母親でした。

 その彼女が運動の顔の座を降り、自宅へ帰ることになりました。彼女に向けられた中傷と憎悪、共和党だけでなく民主党への不満などがその理由です。彼女は平和や理由亡く死んでいく人々について語っているのに、「左翼か右翼か」といったレッテル貼りでしか受け止められないことに対する不満が彼女にはあるようです。

 アメリカでは政府の軍事政策に反対するのは大変です。「この戦争は誤っている」と言えば、「お前は命懸けで戦っている兵士を支持しないのか」と言われます。兵士を批判しているのではなく、政策を批判しているのだと説明しても理解してもらえません。先日、ヒラリー・クリントンの演説を聴きましたが「軍を支援し続けてきた自分が戦争に反対だと言うのだ」と言っていました。常にこう言わないと話を始められないといった雰囲気があります。しかし、こうした一種の前置きが常に必要なために、肝心の政策論が焦点から外されるという問題があります。今のアメリカは、そういう傾向が強すぎると思います。

 この点では日本も類似しています。私は軍事的な検討の結果、イラク侵攻前に見当違いの戦略だと結論し、そう述べ続けてきました。大規模侵攻ではなく、テロリストだけに焦点を絞った情報収集と攻撃しか効果は期待できません。これでも確実に効果が出るとは言い切れないほど困難な方法なのですが、大規模侵攻はすべてを台無しにするほど期待が持てない選択です。ところが、こう言うとテロリストに味方するのかといった声が返ってきます。もう少し人々が軍事に対して多面的な発想をしてくればよいのですが、脅威が目の前にあると、どうしても考え方が条件反射的になるようです。火事で人々が出口に殺到し、順番に脱出すれば全員が助かったと思える状況でも、全員が焼死してしまうことがあります。これと似たようなものかも知れません。

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