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元国防省副補佐官、慰安婦問題を語る

2007.3.15



 military.comに、従軍慰安婦問題に関するコラムが掲載されました。著者のピーター・ブロックス氏はワシントンに本拠を置シンクタンク・ヘリテージ財団の前上級研究員です。その前はブッシュ政権の一員として、国防省でアジア太平洋問題の副補佐官を務めました。テロリズムに関する著書もあります(書籍については文末に掲載)。

 こうした人でも、従軍慰安婦問題に関しては以下に示したように厳しい指摘をしています。日本でこんなことを言えば、たちまち左翼のレッテルを張られてしまいますが、ワシントンではこれが普通というわけです。この問題は民主党が主導していますが、政権内にいた人たちも、日本が謝罪することを歓迎しています。あえて、私のコメントは載せません。みなさんの参考にして頂ければと思います。


日本 その無用な不名誉


ピーター・ブロックス
2007年3月13日



 今から一週間以上前、日本の内閣総理大臣安倍晋三は、「大日本帝国陸軍は第2次世界大戦前戦中、200,000人もの人を“従軍慰安婦”として軍の売春宿で働くよう“強制”しなかった」と主張しました。

 この「不都合な真実」(1)について語りましょう。

 安倍は、どうやらこの歴史の修正における不十分な試みで、日本での人気の落ち込みを引き揚げようとしたようですが、それはすでに国内で物議を醸し、アメリカのアジアにおける利害関係を浸食し、そして日本の名誉を無用に損ねています。

 日本のパブリック・リレーションズの悪夢は、米下院が先月、日系下院議員マイク・ホンダ(民主党、カルフォルニア州選出)によって提出された、東京が公式に謝罪することを求めた決議を検討したのに安倍が反応した時に始まりました。

 反論において安倍は、女性たちが強制(キーワード−強制!)された証拠はないと示唆し、全アジアからの猛烈な批判を巻き起こしました。彼は「従軍慰安所」(2)に対して日本は謝罪しないと強く主張することで、溝を余計に深くしました。

 事実、日本はかつて本当に謝罪をしていません。1993年、日本の政府高官—官房長官—がこの悲劇に果たした政府の役割について謝罪しました。しかし、この“謝罪”は総理大臣から発せられたのではなく、国会(日本の議会)の承認を得ていません。

 いま、安倍は自分のコメントから必死でムーンウォークで遠ざかろうとしており、海外のメディアは誤解をしていると主張しています。土曜日に放送されたテレビ番組のインタビューで、彼は1993年の謝罪は変わっていないと言うことで、自分に対する世界的世論の流れを止めようとしました。

 彼は、安倍政権は自由民主党がこの問題を新たに調査するのに協力すると約束もしました。だけど、この報告書が一体どんな結論を出すというのですか?

 もう何年もの間、強力に組織化された日本軍が、頻繁に部外者の「ブローカー」の助けを得て、1930〜1940年代の間、植民地や占領下の女性を性の奴隷にしたという十分で議論の余地のない証拠が示されてきました。

 女性のほとんどは中国と韓国から来ましたが、略奪隊である日本軍は、アジアに領地を持つヨーロッパ大陸出身の一部のヨーロッパ人も虐待しました。帝国陸軍は、士気を高め、兵士が地元の女性を強姦するのを防止し、衰弱をもたらす性病が軍に拡散するのを止めるために、2,000カ所もの慰安所を設置しました。

 醜態極まりない事柄は、実に南京略奪やバターン死の行軍のような日本軍兵士によって行われた別の残虐行為に匹敵します。

 公正を期して言うなら、現代の日本は大日本帝国ではありません。日本は民主的で、平和主義に近いほど穏健で、親米的です。しかし、東京は帝国時代の過去を手につかむところまで来ていません。伝えられるところでは、学校の教科書はその過去についてうまく取り繕って拒絶すらしようとし、1ダースの第2次大戦のA級戦犯を含む250万人を奉る靖国神社への公人の参拝について議論が続いています。

 事実を拒否し、修正するのは日本だけではありません。一例として、中国も同様に毛沢東の恐ろしい遺産を直視していません。一部の歴史家によれば、文化大革命とその他の軍事作戦はおよそ7千万人の中国人を殺しました。

 慰安婦に関する騒動は、アジアにおけるアメリカの利害関係における戦略的な反動になり、もしかすると重要で大概は盤石な米日同盟を損ないかねません。

 安倍の国家主義的な発言は、まず第一に中国で広く報じられました。それは中国人の感情を煽り立て、北京の巨大な軍事力の増強を正当化するのを助けます。

 中国は先週、防衛予算を18%引き揚げると発表し、昨年の13%の上昇に続いて、10年間以上にわたる2桁の防衛予算の引き上げに追加しました。

 この増強は台湾に再統一を強制したり、アメリカとバランスを取るためだけではありません。中国は1930年代に日本が満州を占領したことに遡り、東京都の恨みを解決することにも目を向けています。

 中日間の緊張が強まると、私たちは新しい軍備競争、地域的な不安定 、そしてワシントンの頭痛の種を見ることになるでしょう。

 この論争は2つの朝鮮との関係も複雑にします。韓国は安倍の奇妙な言動に関してアメリカに圧力をかけ、すでにソウル=ワシントン間の関係をまでより先鋭化させています。

 先週のニューヨークでの米朝核協議がすべからく(軽薄な)笑顔であった間、並行するハノイでの日朝会談は軌道に乗りませんでした。

 これはなぜでしょうか? 両者の頑なな態度が理由です。平壌は安倍の従軍慰安婦についての態度に怒り、東京は1970年代以来の北朝鮮工作員による日本人の拉致に激怒していました。

 歴史の否定に固執すべきでしょうか? 東京の一部はこれが国家の名誉の問題だということを理解していますが、全員はそう思っていません。一部の野党議員たちは、安倍に日本の第2次大戦の遺産を直視する勇気を持てと要請しています。

 日本文化において名誉は重要です。しかし、意味のない党による“調査”を含んだ安倍の曖昧な言葉は、単に問題を悪化させ、日本に不名誉をもたらすでしょう。

 南京大虐殺の70周年記念は間近に来ており、いまは東京がドイツの戦後戦略にみられる改悛を行い、きっぱりとその歴史を解決するのに理想的な時でしょう。

 日本の総理大臣が誠実に謝罪し、それに対して議会が支持しても、これら無辜の女性たちに課された悪夢について、日本の植民統治と第2次大戦の過去の傷は完全に癒すことはないでしょう、でも少なくともそれが出発点なのです。

 誤りを認め、責任を認め、謝罪することは、真の名誉の証です。安倍さん、我々の背後にある第2次大戦の過去を忘れ去るための有意義なステップを踏んでみてはいかがですか?

訳注

  1. 先日、アカデミー・ドキュメンタリー映画賞を受賞したばかりの、地球温暖化をテーマにしたドキュメンタリー映画「An Inconvenient Truth」に引っかけています。
  2. 原文「comfort stations」には公衆トイレの意味もあり。



 
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