マケイン議員がラムズフェルドを批判

2007.2.21



 military.comによると、共和党のジョン・マケイン上院議員はヒルトンヘッド島の退職者のコミュニティで800人以上の聴衆を前にして、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官を激しく批判しました。

 「我々はこの戦争の不始末の高い対価を支払っています。これはドナルド・ラムズフェルドに与えられる最も優しい言葉です。対価はこの上なく高く、私は深くそれを後悔しています。私はドナルド・ラムズフェルドが歴史で歴史での最も悪い国防長官の1人として記録されるであろうと思います」

 マケイン議員の発言は最大級の批判と言えますが、記事はラムズフェルドが辞職した時のコメントと内容が異なっていることを指摘しています。当時は、マケイン議員はラムズフェルドの貢献に対して感謝を述べていましたが、今回の遠説ではまったくそれがなかったのです。また、その後もマケイン議員は、イラクで勝利を勝ち取れると述べました。発言が変わったのは、掃討作戦の結果が思わしくないからでしょう。

 大統領選挙を意識して、政治家たちの発言が変化してきています。もはやブッシュ政権を支持する人は、政権と共に心中してもよいと考えている人たちだけです。イラク戦に賛成したかどうかで、今後の政治活動への評価が変わってしまうのです。アメリカには過去の教訓を過度に意識して、危機に際して適切な視点を持てないという欠点があります。湾岸紛争の時、アメリカのメディアや政治家の中では、武力介入はベトナム戦争の悪夢を再燃させるという予測が主流でした。日本のメディアは、アメリカのオピニオンリーダーの動きを見てから、右へならえをしました。私は短期決戦だから、ベトナム戦争のようにはならないと考えていました。終戦の形にはひどく不満でしたが、湾岸戦争は大体は予想通りに進行したと考えています。この時の成果は当面望めないほど大きかったため、2003年に再びイラクに侵攻した時は、アメリカのメディアや政治家はあまり抵抗感を感じませんでした。しかし、私はこれこそ危険な戦争だと判断し、絶対にやるべきではない戦争だと考えました。案の定、その通りになりました。マケイン議員はベトナム戦争で捕虜になった経験があるところから、「戦争を知る者」とみなされていますが、私は経験者だけが戦争を冷静に見られる者ではないと考えています。逆に捕虜収容所でひどい目にあったような人は、その忌まわしい体験から戦争を冷静に見られないかも知れません。「戦争を知る者」を政治家にすれば安心という発想自体が安直です。

 こうした判断の誤りは、日常的な感覚で戦争を見るために起こります。戦争は特別なことなのです。特別な目で見なければなりません。それは、先人が尊い犠牲を払った戦争の事例を分析し、それに基づいて予測を立てることなのです。「この間、うまく行ったから」という安直な考えは捨てることです。自分の直感など信じないことです。アメリカのような先進国ですら、政治家やメディアは月並みな発想しか披露しないのです。日本が進路を誤らないためには、これらの見解を鵜呑みにする態度をまずやめるべきです。

 大統領選がどうなるのかが非常に気になります。イラク戦争に反対したバラク・オバマ氏が人種の垣根を越えて支持されるのか。ヒラリー・クリントン氏が初代白人女性大統領になるのか。共和党は国民を納得させられる候補者を擁立できるのか。マケイン議員はイラク増派に賛成するなど、最後までイラク政策を支持し続けた点でハンディがあります。米国民全体の傾向がどこへ向かうのかが問題です。こればかりは誰にも決められません。傾向がはっきり出ず、前回の大統領選挙のように調査会社が判断を誤ることもあります。アメリカの世論は意外と保守的ですから、民主党はヒラリー・クリントン氏を候補者に選出するのではないかと私は予測します。共和党は誰になるのでしょうか? 状況によって意見を変えるマケイン議員がどこまで支持を集められるのか気になるところです。そして、大統領選の結果によって、日本のメディアや政治家がどう意見を変えていくのかにも注目しています。

 話は変わりますが、イラク多国籍軍のウェブサイトは、今日も調子が悪いようです。記事のタイトルしか見られません。(苦)

 
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