バグダッド掃討作戦は完全な不発

2007.2.16



 バグダッド掃討作戦は当然と言えば当然の結果になりそうです。シーア派の居住区を捜索しても成果はほとんど出ていません。武装勢力はイラク軍がもたついている間に市外に逃げたようです。全面的な対決を避けるゲリラ戦術に、掃討作戦はすでに不発の兆候が見えてきました。military.comによれば、拘束した武装勢力は14人、押収した武器は4個だけです。

 シーア派の市民軍が逃走したことが、タリク・アルハシミ副大統領(スンニ派)によって指摘されました。「私は彼らの指導者の多くがいまバスラと他の南部の州に隠れているという情報を得ています。私は流血と混乱の背後にいる者たちは追求されるべきで、犯罪者は裁かれなければならないと確信します」。

 別の記事によると、捜索の間に市内南部のシーア派区域で自動車爆弾が爆発し、少なくとも市民4人が死亡、15人が負傷しました。犯行場所はイラク軍の検問所から69m足らずの場所でした。サドル・シティでも爆発があり、3人が死亡、17人が負傷しました。

 まあ、こんなものでしょう。掃討作戦はいつまでも続けることはできず、終了すれば武装勢力は徐々に戻ってきます。そして、また同じことが繰り返されるのです。シーア派の武装勢力が南部にいるということは、彼らがイランの支援を受けていることを窺わせます。押収された武器が極端に少ないのは、彼らがイラク軍内部のシーア派の支援を受けて、武器を市外に持ち出せた証拠かも知れません。抜け道になっている検問所があるはずです。英軍が南部の国境を封鎖していますが、これも大して意味のないことです。

 実は、掃討作戦が行われる前に武装勢力が逃げてしまうのは、これまで何度も繰り返されてきたことです。私はこれまでに何度そういうニュースを読んだか分かりません。これで、アメリカの世論は軍事的方法ではイラク問題は解決しない、増派は無意味だという方向に確定するでしょう。これは大統領選挙にも大きな影響を与えます。

 もし、今回の結果が意外だと感じる人は、必要な情報に目を通していないということですから、今後は情報収集を強化することをお勧めします。まだ、アメリカにチャンスがあると考えている人は、いい加減に考えを変える時です。

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.