6ヶ国協議での日本孤立説はナンセンス

2007.2.16



 6ヶ国協議の結果を見て、国内メディアが「日本の孤立」を言い始めました。また、始まったという気がしました。いい加減にこの種の幼稚な視点からメディアは脱却すべきです。今回の協議で日本は孤立などしていません。

 協議の詳しい内容はもちろん分かりません。しかし、報道から分かることは、日本が議長国の中国の要請で拉致問題には触れないように妥協して、核廃棄を優先させたということです。そうしないと北朝鮮がまた協議から離れかねないので、中国としてはそれを防ぎたかったのです。拉致問題に対する日本の希望は他の国にも十分に理解されていますし、切り捨てられたわけではありません。こう言う人たちは新聞の見出ししか読んでいないのではないかと考えます。

 第1次世界大戦の講和会議で日本の提案がすべて無視されたことを日本人はひどく恨んだという過去はありますが、もうそんな時代ではないのですし、外交交渉に関しては、マスコミは客観的な報道に徹して欲しいと思います。

 実は朝鮮日報が問題点をもっと詳しく報じています。合意文書が封鎖を指定したのは寧辺の5メガワット級原子炉だけではないと朝鮮日報は書いています。合意文書には「あらゆる核プログラム」という表現があり、すでに製造した核物質や核兵器、関連機材や施設すべてをくくれると言うのです。国内メディアはすべて寧辺の原子炉だけが対象だと報じましたが、話が違うようです。ところが、これは韓国やアメリカの解釈で、協議の中では何が核プログラムなのかという議論は行われておらず、北朝鮮がごねる可能性を残したとも書いています。つまり、北朝鮮は閉鎖しても都合がよいものだけを申告し、核兵器を隠し持ち続ける可能性があるわけです。これこそ今後の6ヶ国協議を考える上での問題です。これでは話がまるで違うことになり、協議の評価は最初から考え直す必要が出てきます。北朝鮮がいい加減な閉鎖リストを提出し、そこで今回の成果が頓挫する可能性は十分にあります。現に、国内向けには原子炉を一時停止することで百万トンの重油がもらえると説明しています。

 とにかく、これなら合意文書の原文を読んだ方が早いわけで、新聞やニュースを見る必要はないことになります。事実を日本人が好きな孤立感に沿って脚色するのでは、報道とは言えません。

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