吉進丸事件:船長が書類送検

2007.2.11



 2006年8月に、北方領土・貝殻島周辺で起きた第31吉進丸の銃撃・拿捕された事件で、根室海保は10日、道海面漁業調整規則違反で坂下登船長を書類送検する方針を固めました。当初より私は、吉進丸側が越境した可能性が高いと指摘しましたが、その可能性を一層高める情報が出てきました。坂下船長はカニかごを降ろした時は規則ラインを越えていたと供述しました。

 カニかごを降ろした時に規則ラインを越えていたのなら引き揚げた時にも規則違反を犯すことになります。銃撃を受けた時、吉進丸はかごについた海草を落としていたといいますから、規則ラインを越えていたのは間違いないことになります。すると、吉進丸が規則ラインの外側にある中間ラインを越えていたかどうかが最後の問題です。規則ラインは道海面漁業調整規則に基づいて決められたものですが、日ロ間で取り決めている中間ラインを越えていなければロシアの拿捕は非合法的な行為であったことになります。私はその可能性が高いと考えますが、当事者がそれを口にすることはないでしょう。

 今でも、私は事件当時のマスコミ報道に不満を持っています。領土問題にからめ、悲劇的事件と報じたため、事件の本質が見えなくなってしまいました。マスコミは過去の報道に準拠して報道することが多く、実態と噛み合わないことが報じられることがしばしばあります。湾岸戦争を「代理戦争」と冷戦時代の死語で表現したのは、その典型です。夕張市が財政破綻すれば、夕張は豪雪地帯だから除雪比の捻出が大変だと報じます。これは今年の北海道は地球温暖化の影響で雪が非常に少ないことを無視しています。日本の報道の手法はもっと近代化される必要があります。

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