バグダッドで大規模な掃討作戦が始まる

2007.2.9


 バグダッドの掃討作戦の模様がそろそろ報じられるようになってきましたが、まだ情報が不十分です。また、報道が始まるのは珍しく日本の方が早かったという印象です。軍事作戦はバグダッドだけでなくファルージャの近くでも行われています。

 バグダッド市内には検問所が置かれ、そこには爆風を防ぐ障壁も置かれています。アパッチ攻撃ヘリコプターが飛ぶのも見られます。そうした中で爆弾事件などのテロ事件が起きています。military.comによれば、民間軍事会社の車両がグリーンゾーンの近くで攻撃を受けたり、国営テレビ近くのビル屋上にいた警備員4人が射殺されています。爆弾事件で15人が死亡し、大勢が負傷しました。

 しかし、この記事で興味深いのは、バグダッド市民の生活について触れた部分です。ガソリンスタンドの備蓄量が減り、スタンドには1マイルもの車の列ができています。ここで銃撃や自爆攻撃が行われると大変なことになります。タクシーは敵対する派閥の居住区へ乗客を運ぶことを拒否しています。多くの市民は穀物などの基本的な食料を手に入れ、発電機用の燃料を手に入れるためにその日暮らしの状態です。電気は1日に2時間程度しか流れず、発電機は残りの時間のために使います。ロウソクやランタンが照明用に使われています。こういう状態で、空をアメリカのヘリコプターが飛び回っていたら、誰でもこの現状はすべてアメリカが元凶だと考えるでしょう。未だに首都で電気が満足に供給できないということ自体、そもそもおかしいと言うべきです。民生用インフラの復旧がこの戦いの鍵を握っているということです。一時、バグダッドでは娯楽が不足しているためにテレビが大量に売れたといいます。すでに、血を流す軍事活動ではない、民間の力が状況を改善する時期が来ていると考えられます。

 同紙の別の記事によると、米海兵隊がファルージャ北西部のサクラウィーヤ村(Saqliwiah)をパトロール中、ユーフラテス川沿いの家の前に白いトヨタ車が停まっているのを発見しました。海兵隊は家宅捜索を行いました。家の中には数名の若い男、女性と子供、老人がいました。捜索の結果「Progressive Mosque Security」と英語で書かれたIDカード、IEDの起爆装置、圧力版とAK-47が見つかったため、2名を拘束しました。その時、2人が小型船で川から上陸しようとしているのを見つけました。ボートからはAK-47が発射され、彼らは逃走しました。

 老人はオクハシュ族(Okhash)の族長で、海兵隊に友好的な人物で、協力できる時がくるのを待っていたと言いました。記事では彼の安全を確保するために「族長X」と匿名で報じています。族長Xはイラン人と外国勢力が医者と教師を追放し、自分の部族を不安定な状態にしたと考えていました。しかし、彼らが勢力を持っている間は逆らわず、いずれ海兵隊と協力して治安を回復したいと考えていたということです。海兵隊指揮官と族長Xはお互いの協力について議論した言います。記事はアルカイダから小さな勝利を勝ち取ったと書いています。この関係を上手く維持すれば、アルカイダの浸透を防ぐことができるでしょう。

 しかし、異民族同士が圧力下で強調することほど難しいものはありません。かつて日本軍は植民地支配から解放すると言ってアジア諸国を占領しました。しかし、上官が部下にビンタをするのが当たり前の日本軍が現地の人々に親切にすることはできず、逆に反感を買いました。『ゴースト・ソルジャーズ』というドキュメタリー本には、日本軍が友好のために訪問した村で、日本軍がフィリピン人を叩いていた事実が書かれています。そして、フィリピン人にとって、顔を叩くことは相手に最大の屈辱を与えることだということを、日本人は理解していなかったとも描いています。そのため、レンジャー部隊が秘密裏に移動しても、フィリピン人は知っているのに日本人は決して知らないという状況が生まれました。皮肉にも、これが海外の事情に通じ、博愛精神の持ち主でもあった本間雅晴中将の指揮下で行われたのです。これはイラク戦についても共通しています。米軍の一部に、イラク事情に通じた者がいても、問題は軍全体がどうかということで、それは常にそう期待できないものなのです。米軍は日本の失敗をいま繰り返しているのです。

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