ゲーツ長官の証言に見どころはない

2007.2.7



 ワシントン・ポストが、ロバート・ゲーツ国防長官がイラク戦略の展望について語った議会証言を報じました。

 ゲーツ長官はバグダッドの保安計画が成功したら、今年が終わるまでに部隊の一部を撤退させられるかも知れないと述べました。いつの間にか、今年の夏までにという撤退開始時期が年末まで延びてしまいました。もともと、確たる計画はブッシュ政権にはないので、この期日は今後もさらに変動することでしょう。元々、あてにならない期日なのです。

 また、先日発表された巨額の予算案には、イラク増派分の費用は含まれていないことも明らかにしました。その理由を長官は増派が短期間だからとしています。本当に短期間で済むのかは疑問ですが、12万人程度の基本的な派遣兵数でも戦費がどんどん増加している点が気になります。増加分の主原因は何なのかを突き止めたいものです。故障した武器の修理や交換のための費用が最も考えやすい理由です。

 長官は他にも色々答弁していますが、どれも嫌な未来しか予想させないもので、うんざりです。要するに、「上手く行っていない」ということを、政治家独特の言い回しで、そうではないように見せているだけです。そこには戦略的な慧眼も何も感じられず、ただ言い訳に満ちているだけです。日本が太平洋上で玉砕を続けた期間の軍部の言動に共通するごまかしを感じます。

 イラクに投下した復興費用がどこかに消えた話がアメリカで問題になっています。今後、こうした汚職の実態が明らかになり、イラク政策への支持率はさらに落ちるでしょう。ブッシュ政権は最終的に最悪の評価を受けることになると思います。現在準備しているバグダッドの掃討作戦もイラク軍の準備が遅れているという情報もあります。これは、まだイラク軍の体制が整っていないことを表す格好の証拠です。

 こんな戦争に日本は片足を突っ込んでしまいました。それがなぜなのかを、日本人はよく考えてみる必要があります。

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