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有害鳥獣駆除は自衛隊の管轄外

2007.12.24



 自衛隊と有害鳥獣駆除の関係について調べてみたら、首相官邸のホームページに面白い一覧表があるのが分かりました。三重県の個人から提出された要望に対する防衛省の回答です。以下はその部分を抽出したものですが、その要望は簡単に言えば、自衛隊に農林水産業の支援と有害鳥獣の駆除を行って欲しいという意見です。これに対して、「有害鳥獣の駆除」は自衛隊の任務にあらずという回答をしています。

要望事項
陸上自衛隊、国土復興支援連隊の創設
制度の現状
現状において、農林水産業支援及び有害鳥獣対策を目的とした任務は有しておらず、当該業務に特化した部隊も保有していない。
求める措置の具体的内容
自衛隊の業務に、農林水産業支援業務及び有害鳥獣捕獲業務を追加する。また、陸上自衛隊に、当該業務に特化した、「国土復興支援連隊」を創設し、その任務に当てる。
具体的事業の実施内容・提案理由
テロは、なぜ起こるのか?という事を考えると、貧困がある。では、食べる為に、何をすれば良いのか?農林漁業を指導し、労働と収穫の喜びを分かってもらい、テロの起こる貧困国でも農林漁業で食べて行ける様にする。あわせて、我国の現在の農林漁業を考えてみると、決してそれだけの業で食べて行ける状態に無い。そこで日本の国土を守るという意味において、自衛隊を活用し、まずは、高齢者だけの、国内農林漁業及びその振興を妨げる有害鳥獣の捕獲を支援し、その使命が完遂できるようになれば、海外の貧困国で農林漁業の指導を実施する。まずは、陸上自衛隊の中に国土復興支援連隊を創設し、その中に、農業支援中隊、林業支援中隊、漁業支援中隊、連隊本部管理中隊を置く。隊員の採用にあたっては、現職の普通科、施設の希望隊員を筆頭に、フリーターや、ネットカフェ難民、中高年各業経験者等も含め、厳正な入隊面接試験、体力試験、道徳試験を実施する。
各府省庁からの提案に対する回答
 自衛隊の任務は、自衛隊法(昭和29年法律第165号)第3条第1項において、「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする」とされており、その任務を全うするため、防衛省・自衛隊は、実力組織である陸海空自衛隊を中心に各組織で構成されている。
 上記の規定の趣旨に照らせば、農林水産業支援業務及び有害鳥獣捕獲業務は、基本的には我が国の防衛及び公共の秩序の維持には該当せず、また、農林水産業支援業務や有害鳥獣捕獲業務について自衛隊は知見を有していないこと等から、自衛隊の業務に追加すること及び当該業務に特化した国土復興支援連隊を新たに編成することは適当ではないと考える。
 なお、有害鳥獣対策に関し市町村から申出があった場合、自衛隊法第100条「土木工事等の受託」の規定に基づいて、その要件に従い、現有の自衛隊の装備、能力を活用しうる業務については、適切に協力してまいる所存である。
提案主体名
個人
提案主体名都道府県
三重県
制度の所管・関
防衛省


 文字を赤くしたところが、防衛庁の基本的な態度を示した部分です。先のゴジラ対策研究の報道を疑問だと感じるのは、このためなのです。ネズミやゴキブリの大量発生で自衛隊が出動することはあっても、それは法律上の有害鳥獣駆除ではありません。ネズミもゴキブリも有害鳥獣に指定されていません。法律上、有害鳥獣は鳥類又は哺乳類と決められており、昆虫は入っていません。ゴジラを有害鳥獣として駆除するという発想が本当に旧防衛庁にあったのかは非常に疑問です。この研究を提案したのが石破防衛長官(当時)で、彼を満足させるために出した結論だったと考えるのは行き過ぎでしょうか。

 ところで、自民党が自衛隊に有害鳥獣駆除を行わせるための検討を行っている事実があります。全国山村振興連盟のホームページにその記事が載っています。電気柵の設置に自衛隊を活用、自衛隊が麻酔銃でサルの駆除を行う、退職した自衛官を猟友会員にするなどの案が出されているようです。これは地方で銃砲や罠の資格を持った人が減り、有害鳥獣の駆除で苦労していることから出ていると考えられます。ただ、自衛隊を使うという考え方は行き過ぎのように思えます。確かに地域的に大きな問題になっている事例もありますが、自衛隊を使う必要性があるとは思えません。現に、罠猟の資格者がいない地域では、役所の職員が資格を取得して対応しているところもあります。警察は各地域にいるわけですし、都道府県警は制度上は知事の下にあります。自衛隊はまったくいない地域もあるわけですから、むしろ警察で対応する方が適切でしょう。最近は捕るだけの対応から問題を起こさない対応が求められており、撃退すればよいという考え方は少数になりつつあります。

 余談ですが、札幌市内にある駐屯地にエゾシカが迷い込んだことがあります。この時は、大学から専門家が呼ばれ、麻酔銃で捕獲することになりました。この時は、専門家が到着する前にエゾシカは駐屯地の外へ逃げました。別の駐屯地では隊員が取り囲んで捕獲しようとしたところ、エゾシカが隊員の頭上を飛び越えて逃げました。その他、演習場で野生動物と接触することはよくあるようです。


今回初めての試みとして、アンケート調査システムを利用し、当サイトで紹介している「TacOps」を教材にした、戦術問題を出してみました。ある突破作戦に最適の突破ルートを考えてみて下さい。(問題はこちら

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