onlineで定期購読の申し込み!

代表的ニュース週刊誌
Time(英語版)

総合的国際情報誌
フォーサイト

歴史ファンなら…
歴史街道

航空自衛隊なら
Jウイング

海上自衛隊なら
Jシップス

陸戦用車両なら
PANZER

トルコが民間人への爆撃を否定

2007.12.18



 トルコが先の空爆に対して反論を始めました。spacewar.comによれば、トルコは居住区を空爆していないと主張しています。

 アリ・ババカン外務大臣(Foreign Minister Ali Babacan)はテレビで放送された発言で、「あなたはトルコ軍の報告を信頼すべきだ」と述べ、空爆は8機によって行われたこと、クァンディル山脈の近くにあるいくつかの村を爆撃し、橋にダメージを与え、若干の住民の避難を生じたと説明しました。トルコ軍の説明では、空爆の後に砲撃も行われ、クルド系イラク人を狙ったのではなく、PKKの基地を狙ったということです。

 一方、PKKの説明も若干の変化がありました。狙われた村はPKKの拠点がある近くにあります。ゲリラ5人と民間人2名が死亡し、ゲリラ3人が軽傷を負いました。負傷したものは女性や子供を含めてさらにいるとのことです。クァラ・ディザ(Qala Dizaa)地区のクルド高官は、リジュワ村(Leejuwa)に爆弾が投下された時に、女性1名が死亡し5人が負傷したと述べています。

 以上の情報からすると、民間人の死傷者が出ていたのは間違いないと見てよさそうです。トルコから見ればPKKの拠点でも、その周辺には民間施設があるのです。ゲリラの基地を攻撃したつもりでも、民間人を巻き添えにすることは珍しくありません。「あなたを狙ったわけではない」は被害を受けた側には通用しない論理です。ゲリラは一般人がいる場所で活動するもので、正規軍のように、ジュネーブ条約によって軍と民間人の分離が義務づけられているわけではありません。一方、正規軍は法を守らなければならない立場にあります。

 トルコにとってこの空爆は尾をひきます。メディアもこの事件を追及し、被害に関するさらに詳しい情報が出てくるはずです。被害者たちの氏名や顔写真は、コラテラル・ダメージという説明を国際世論に受け入れにくくします。特に、ババカン大臣の発言は最低です。自分の軍の声明だけを信じろと言ったところで、それを逆に不安を助長します。ゲリラに対しても戦争法規が適用される現代、法を尊重している態度を示す方が国際世論を味方につけられます。なにより、トルコが現場に人を派遣して、被害を調査したわけではないことは明らかなのですから、トルコが何と言おうと人びとは被害はあったのだと考えます。この調子で空爆を続けると同じことが繰り返され、トルコは不利な立場に置かれる恐れがあります。こうしたことも、戦略に組み込んで考えなければ行けないのが現代戦です。

 これは日本にとっても注意すべきことです。以前から、日本は軍事活動における政府発表では落第点をもらい続けています。「俺の国の戦争だから、他国にとやかく言われる筋合いはない。そういう文句を言ってくるところを見ると、お前は敵のシンパなのか」といった発言は顰蹙を買うだけです。しかし、防衛省は守屋元次官の汚職事件で明らかなように「おらが省」であることを露呈してしまいましたし、挑発的な発言をする政治家が国民の人気を得る傾向を考えると、日本がこの分野で再びしくじる恐れは高いと考えるべきです。


今回初めての試みとして、アンケート調査システムを利用し、当サイトで紹介している「TacOps」を教材にした、戦術問題を出してみました。ある突破作戦に最適の突破ルートを考えてみて下さい。(問題はこちら

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.