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イラク人6千人が米軍と同盟

2007.11.30



 military.comによると、キルクーク西方にあるハウィジャ(Hawija)のスンニ派住民6,000人が米軍と同盟を結び、治安維持に協力することになりました。

 同盟の結成を祝う式典は1ダースほどの族長が取り仕切り、戦士たちは金色の組みひもで飾った黒いローブをまといました。戦士たちは、275ドルの月給で約200カ所の検問を守ります。この月給の金額はイラクの警察官の平均給与に近い額です。この種の組織はイラク全土では約77,000人おり、大抵はスンニ派です。

 こうした組織が地域を警備し始めると、少なくともこの地域においては米軍を攻撃する武装勢力はいなくなりますし、外国人テロリストの活動はほぼ不可能になります。ただ、記事には気になることも書いてあります。キルクークはクルド人にとってエルサレムのような聖地です。彼らは先祖がここに住んでいたと考えているのです。この地にアラブ人が住み始めたのはフセイン政権下でアラブ化政策が行われたからで、数万人のアラブ人が移住しました。北部イラクの民族構成はかなり複雑です。前にも引用した地図を下に再掲載しました。図で見ると分かるように、キルクークはクルド人とアラブ人の境界線上にあります。近くにはトルコマン人もいることから、状況は安定していません。米軍はテロリストをハウィジャで打ち負かすことでキルクークから遠ざけ、混乱を避けようと意図しています。これが狙い通りに上手く行くのかを、今後よく見ていきたいと思います。

 イラクでの米兵の死亡数は激減し、military.comによれば昨日の時点で35人と、2006年3月以来最低となりました。10月は30日の時点で34人と発表されていました。その後、さらに死者が出たり、重傷だった者が死亡して35人を越え、今月が2006年3月以来で最低となったのでしょう。

 こうした組織が増えても、ほとんどがスンニ派であることから、イラク人の大半までにはなりません。シーア派にこの動きが波及するのかは、ほとんど予測できません。彼らの価値観は日本人の常識を越えています。どう転ぶのかは、その時にならないと分かりそうにありません。イラク人が親米的な政権ができて、国が安定することを望むとは考えにくく、仮にそうなったとしても、散発的なテロ活動がなくなることはないと思います。そうでなくても中東諸国は争いを続けてきました。現段階で最もありそうな未来像は、テロが低レベルで継続しつつけることです。そうなると、アメリカは大義名分を達したと判断して軍を引き揚げます。しかし、遠くからイラクをコントロールしようとし続けるため、反米的なムーブメントが機会を捉えて爆発する恐れを秘めています。


地図は右クリックで拡大できます。



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