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BW社発砲事件の供述書が公開

2007.11.16



 9月16日にバグダッドでブラックウォーター社の警備員が17人のイラク人を殺害した事件で、当事者の警備員が、車列は先に攻撃を受けていたと主張しました。「ポール」という名前だけで知られる警備員(29)が事件の3日後に行った宣誓陳述の内容を、ABCニュースが公開しました。(宣誓供述書の原本はこちら

 ポールは陸軍でボスニアとイラクで勤務した経験を持ち、BW社では砲塔銃手で、車両の上部に取りつけられた小砲塔から周囲を警戒する任務を務めていました。この日、12時30分頃、車列が交差点に入った時、白い4ドアのセダンがポールを見つめながら、西向きの車線から真っ直ぐに車列に向かってきたので、ポールと同僚は手信号を使い、叫んでセダンを止めようとしました。ポールは自分と同僚への危険を感じたので、運転手を攻撃し、脅威を止めました。同時に、車の背後約50メートルから小火器で撃たれたので、発砲のせん光が見えるところにいる者に対して発砲しました。攻撃者は制服を着ており、車を車列に突進させ始めたので、ポールは停止するまで車を撃ちました。ポールは無線で戦術作戦センターに「指揮車が撃たれ、攻撃が継続中だ」と報告しました。戦術作戦センターは指揮車が牽引できたら6時方向を警戒しろと指示しました。ポールが砲塔を6時方向に向けると、青のボタンダウンシャツと黒のズボンを着用した男が、AK-47で後続の銃手を狙っていたので、発砲して攻撃を止めました。車列が牽引しながら交差点を出ようとしたところ、ポールは交差点に止まっていた赤いバスからの小火器の攻撃を受け、発砲してこの脅威を排除しました。車列が交差点を出かけた時、左側から車が接近してきたので、これを攻撃しました。砲塔を自分の受け持ち区域に回すと、赤い乗用車が指揮車に向けてバックしてきたので、VBIEDの恐れがあると判断し、発砲しました。車列が歩道の縁石を越えた時、数人の一般市民が見えたので、伏せて、遮蔽物を探すように身振りと言葉で指示しました。このあと、屋根の上から車列を見つめている男2名がいたものの、無視しました。

 この見解とイラク政府の調査結果が大幅に食い違っているので問題になっているわけです(関連記事はこちら)。イラク政府の調査結果はあまり公表されていませんが、military.comによれば、FBIの調査結果がBW社側の供述と大きく食い違い、14〜17人の死は不公正なものだったとしているとニューヨークタイムズが報じています。

 イラク政府は車列は車の流れを止めようとして失敗し、発砲を始めたと言っています。このことから、おそらく車列は自分たちの通行のために交通整理をしようとしたのだと推測できます。しかし、それに気がつかない車両が突っ込んできたため、警備員たちは攻撃と勘違いし、戦闘モードに入ってしまったのだと想定できます。こうなると誰もがテロリストに見えてくるので、次々と撃ちまくることになります。この事件の原因は、BW社の車列が無理な交通整理をしようとしたことにある可能性が高いように思えてきました。ポールの供述書も、何か見えない敵に向けて発砲しているかのような印象があり、本当のテロ攻撃の説明とは信じにくいように思われるのです。やはり、今回の事件は民間軍事会社の問題をクローズアップしたと言えそうです。


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