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新テロ法案が衆院特別委を通過

2007.11.13



 昨日、新テロ法案が衆議院の特別委員会を通過しました。その政府答弁の内容はひどいものでした。石破防衛大臣は自分でも分かっていないことを、さも確定的な事実のように説明し、あたかも何の問題もあるかのように取り繕うことに終始しました。

 その中で、民主党無所属クラブの松野頼久氏の質問が目を惹きました。彼は私が先日ここで紹介したアンティータムへの給油について質問をしました。実は、先日記事を掲載した後で、この問題に関心を持つ国会議員(松野氏ではありませんが)や民主党、市民団体などにこの事実をメールで知らせておいたのです。このメールが引き金となり、調査が進み、国会での質問につながったとすれば、私にとってこれに勝るものはありません。しかし、返事をくれた国会議員は、政府は給油した燃料はOEFに使われたと逃げるだろうと指摘しました。石破防衛大臣はその通りに言い逃れて見せました。

 松野氏がこれを質問するのは、これで二度目のようです。それでも、石破大臣はあれこれと言い訳して見せました。

2003年当時を振り返れば、テロはどこで起こるか分からない状況だった。だから、インド洋をシンガポールに向けて航行しているアンティータムは不朽の自由作戦に従事していたと考えるのが自然であって、OEFに参加していたと考えるべきだ。

 これが石破大臣の答弁の骨子でした。松野氏が「アメリカに確認をしたのか」と問うたところ、石破氏は「OEFに従事していた」と回答されたと説明しました。松野氏がさらに「どこで給油をして、どこで活動をしたからOEFに参加した」と言えるのかと問うと、石破氏はそれにはまったく答えようとせず、「それはOEFという活動が、船を使ってテロリストや麻薬武器資金の出入りを監視することなのだから、当然哨戒活動をするのではないでしょうか。そうした活動をしなかったと合理的に否定するのは断言できない。と答えました。それは単なる消極的肯定でした。要するに、アメリカからはまともな回答をもらえていなかったのです。その証拠に、石破氏は第7艦隊のホームページの記述を引用して、アンティータムがOEFに従事したと書いてあると説明しました。これには笑いました。いやしくも政府が広報活動の一環に過ぎないホームページの記事を引用し、それを説明に換えるとは笑止千万です。要するに、防衛省が何の情報も得ていないことの証拠です。松野氏が「何ガロンの燃料を給油したのか」という質問に対しても「公表できないが、シンガポールに到着する前に消費されたと考えている」としか回答しませんでした。

 正直なところ呆れかえる答弁でした。帰途についたアンティータムがOEFに従事していたという話は、そもそも無茶です。水上艦が行動する時、レーダーやソナーで周囲を警戒するのは当然の話で、その過程で何らかの不審な船や状況に遭遇した時、海軍司令部からの命令を受けた時は、直ちに作戦活動に転じるのは当たり前の話です。石破大臣はこの当たり前の話をもって、OEFに従事したと強弁したのです。こんな理屈が通るのなら、色々な国の戦闘艦がOEFに従事していたとも言えます。海上自衛隊の艦船も母港に戻るまではOEFに従事していたと言えるのです。アンティータムはムンバイでインド海軍の要人と親交を深めるイベントを行っています。これはよくあることで、この時点でアンティータムは帰途の態勢に入ったと見るのが普通です。つまり、特別な事態が起きない限りは帰投のみを行うということです。もちろん、海軍の軍人に尋ねれば、誰でも港に着くまでは気を抜けないと言うでしょう。だから、OEFに従事したとは言えないことが問題です。しかも、ムンバイで投錨中に燃料を給油できたはずなのに洋上給油を受けたのは、日本からもらえばタダだからである以外、理由がありません。

 防衛長官になった時は、どもりながら話していた石破氏は随分と弁論がうまくなったようですが、小さくまとまっただけの話で、これは誰にでも可能な進歩に過ぎません。もっと大きく成長して欲しいものですが、彼に期待できるのはこれまででしょう。彼はもう十分にできあがっていますから、今更変えることはできないでしょう。自民党には防衛問題でこんな切り札しかなくなってしまったのです。こんな事を続けていけば、国民は与党を信じなくなるでしょう。

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