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統計が示すテロ戦争の実態

2007.10.3



 当サイトでは、武装勢力が受けている情報をあまり取り上げてきませんでした。この種の情報は頻繁に報じられていますが、それよりも米軍の死者を眺める方が、戦闘の状況をより把握できると考えているためです。もちろん、武装勢力の情報をまとめるだけの時間がないためでもあります。military.comが、2003年7月以来の武装勢力の死傷者と逮捕者の一覧表を報じました。

 それによれば、2007年8月までに、米軍と連合軍は18,832人の武装勢力を殺害し、5,196人を負傷させ、119,752人を逮捕しました。記事には一覧表が掲載されていますが、それを元にグラフを作成しました。このグラフを見て、なにかがおかしいとは思わないでしょうか。



グラフは右クリックで拡大できます。



 負傷者の数が戦死者の数を上回ることがありません。普通、正規軍同士の戦闘では戦死者の2.5倍程度が負傷するものです。連合軍と武装勢力の戦闘はそれと違うとはいえ、この結果はかなり露骨です。米軍は戦死者の数を増やした方が本国で聞こえがよいし、なにしろ現場での手間が省けます。

 米軍の場合、このグラフは反転します。下のグラフは今年の記録を元にしています。ゲリラ戦の場合、正規戦とは違って、負傷者が多くでる傾向があります。



 重傷を負った武装勢力は手当てされず、現場で殺害されていると考えるべきです。この記事にリンクした掲示板に「我々は少なく殺し、多くを捕虜にしている」と称賛する意見が見られました。しかし、連合軍が無意味な逮捕を繰り返していることは、以前から指摘されていました。特に、イラク軍、警察が行う逮捕は、派閥抗争の延長戦であり、正当な逮捕であったかを疑わなければなりません。捕虜が多いのは、戦闘の結果と言うよりも家宅捜索の際に逮捕した結果でしょう。その顕著な証拠が2004年3月〜4月のデータです。3月末から4月初旬にかけてファルージャで大規模な掃討作戦が実施されたにも関わらず、武装勢力の逮捕者は逆に減り、戦死者が増えています。これは戦闘で忙しく、逮捕を行う暇がなかったためと考えられます。同年8月にはマハディ軍の蜂起があり、その時期も似た結果が出ています。つまり、逮捕者は戦闘で拘束される者よりも、自宅などで逮捕される者の方が多いと推測できるのです。

 これがテロとの戦いです。我々もこの一部に加担していることを忘れるべきではありません。しかし、日本政府は忘れて欲しいようで、「国際協力」という響きのよい言葉を前面に押し出しています。戦争は一端はじまると人間の尊厳を踏みつぶしながら、どちらかが勝利を収めるまで続くものなのです。これは有史以来、戦争を研究した者たちが言い続けてきたことです。21世紀に生きる我々が忘れてよいことではありません。



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