国会議論は給油燃料の目的外使用に固執

2007.10.17



 昨日の参院予算委員会では、共産党の小池晃氏の質問に対して、石破防衛大臣が答弁する場面がありました。しかし、議論は噛み合いませんでした。

 小池氏は、2006年9月4日と22日に、補給艦「ましゅう」が強襲揚陸艦「イオウジマ」に給油した直後の9〜21日にかけて、イオウジマの艦載機であるハリアー戦闘機がアフガニスタンを136回空爆していることを指摘しました。今年2月17日にも、「アンツィオ」に対して補給している。この前後14日間、「アンツィオ」が所属するアイゼンハワー空母打撃群は200回以上空爆を行っている。海上阻止行動に限定しているはずの洋上給油が武力行使に使われていることを問題としたわけです。

 小池氏がさらに証拠を示して追求すると、石破氏は、事実関係を認めた上で、「(小池氏は)アメリカの戦争への加担ばかりを強調しますが、現在は回数において8割、量において7割がアメリカ以外への給油になっています。それをアメリカへの戦争に加担するものと特化して言うのは事実とは違うと思う」と反論しました。高村正彦外務大臣もが石破氏の答弁を応援する形で「国連で承認されているOEFをアメリカは行っているのだから、それに対して給油は行う」と述べたところ、小池氏は「アフガニスタンへの攻撃に使う艦船への給油を中止しろと言っているのであって、アメリカへの給油を禁止しろとは言っていない」と反論しました。

 「OEF以外には使われていない」は、政府が使う常套句ですが、OEFがアフガニスタン全体ばかりではなく、その他の地域での対テロ作戦・訓練にまで使われている言葉であることは巧みに伏せられています。OEFがアフガニスタンから大麻や武器、テロリストが出入りするのを防ぐための作戦だというのは政府の方便に過ぎないのですが、メディアも政治家もOEF以外に使われている点だけを問題にしています。OEFが広範な意味を持っていることを考えれば、テロ特措法が世界各地で対テロ戦争を支援できる法律であることは明白です。テロ特措法の活動地域の定義にはインド洋という表現はありません。テロ特措法第2条の3を読んでください。

第二条  
3  対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。
一  公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。第六条第五項において同じ。)及びその上空
二  外国の領域(当該対応措置が行われることについて当該外国の同意がある場合に限る。)

 こういう規定だから、政府は「OEF以外には使われていない」を繰り返すのです。たとえば、インドネシアのテロ組織を攻撃する作戦でも、自衛隊は給油活動を行えるのです。給油新法も、おそらくこの部分は変更しないでしょう。前にも指摘しましたが、政府が言う洋上給油がアフガニスタン作戦の支援というのは方便です。

 そして、海上を警備しても、武器や大麻、テロリストは陸路で移動できるので、ほとんど意味はありません。先に紹介したように、イラン国境の検問所はまだ整備が完了していないのです。たとえ、イラン国境の警備態勢が整備されても、テロ組織は、パキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、中国の国境を経由できます。国連を筆頭に、各国が自分の立場を表明するためだけに対テロ戦争に参加し、形ばかりの対テロ活動を続けています。まさに「同床異夢」の様相を呈しているのです。これでは効果的なテロ撲滅は期待できません。


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