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他にもある不透明な洋上給油

2007.10.10



 日曜日のテレビ番組「サンデープロジェクト」で、田原総一郎氏が江田憲司氏から提供された資料を公表したと聞きました。その情報は、2006年3月17日に、補給艦「ときわ」が米海軍の誘導ミサイル駆逐艦「ディケーター」(DDG-73・アーレイバーク級)に11万ガロンの燃料を直接給油したことです。

 私はその番組を見なかったのですが、月曜日に、偶然、ディケーターの情報を検索していました。私が見つけたのは、以下の記事です。多分、江田氏が提出したのも、この記事のはずです。

USS Decatur (DDG 73) became the Japan Maritime Self Defense Force's (JMSDF) 600th customer when the Japanese oiler JDS Tokiwa (AOE 423) refueled the guided-missile destroyer in the Arabian Sea, March 15.

Decatur received approximately 110,000 gallons of fuel from Tokiwa in what the destroyer's crew described as "perfect conditions" in the Arabian Sea.

 さらに、この海域での「ときわ」からディケーターへの補給は、これが2回目であったことも書かれています。

The milestone marked the second time the two ships have met in international waters in this region.

 ディケーターはロナルド・レーガン攻撃群の僚艦です。米海軍が発表した情報の中に、ディケーターが「ときわ」から給油を受ける前月の2月24日付けの記事があります。この記事にも、同攻撃群はイラクの自由作戦と不朽の自由作戦、海上保安作戦(MSO)を行っていたと書かれています。また、同攻撃群はイラクの保安と安定化、イラク国民に最良の自決の機会を提供しているとも書かれています。しかし、これではディケーターが間違いなくイラク作戦に従事していたとは言い切れません。

The Ronald Reagan Carrier Strike Group is currently supporting Operations Iraqi Freedom and Enduring Freedom, as well as conducting maritime security operations (MSO) in the Persian Gulf.

The strike group is committed to setting conditions for security and stability within Iraq and providing the Iraqi people with the best opportunity for self-determination.

 たとえば、CNNによれば、ディケーターは2003年12月19日にペルシャ湾内で2トン分の大麻を積んだダウ船を捕まえています。なんと、洋上阻止活動で押収された大麻の6分の1にあたる量です。(米軍は、船に乗っていた12人がアルカイダと関係があると発表しましたが、具体的な証拠は示していません。初期調査の結果として発表しただけです)

 しかし、米海軍は次の記事も報じています。「ときわ」が補給を行った翌月、ディケーターは乗組員の休養のために、甲板上でパーティを開いたという記事です。この中に、ディケーターを含むロナルド・レーガン攻撃群は1月4日に母港サンディエゴを離れ、派遣期間中、オランダ海軍が指揮する連合軍の機動部隊150の一員として、紅海、アデン湾、オマーン湾、インド洋の一部と北アラビア海において、MSOに従事していたと書かれています。ここから、ディケーターがアフガニスタン作戦とも、イラク作戦とも関係のない紅海でも活動していることが分かります。昨日掲載した防衛庁の資料を見れば、紅海がOEF-MIOの活動区域からかなり離れていることが分かります。

Decatur left its homeport of San Diego Jan. 4, as part of the USS Ronald Reagan (CVN 76) Carrier Strike Group.

While on deployment, the ship has conducted MSO as part of Task Force 150, a Dutch-led coalition that operates in the Red Sea, Gulf of Aden, Gulf of Oman, parts of the Indian Ocean and the North Arabian Sea.

防衛庁が配布している宣伝用資料

 military.comによれば、ディケーターは4月28日にはソマリア沖154kmで遭難船を救助し、7人のソマリ人漁民を救助しています。紅海に入ったかどうかは分かりませんが、紅海からインド洋への出口にあるアデン湾にいたことは間違いがありません。

 さらに、別の給油例を見つけました。

 2001年12月18日に、補給艦「はまな」からミサイル巡洋艦「アンティータム」(タイコンデロガ級・CG-54)が補給を受けたことを米海軍のウェブサイトが報じています。

USS Antietam (CG 54) prepares to receive a refueling probe from the Japanese supply ship JDS Hamana (AOE 424) for a refueling at sea (RAS) evolution in the early evening of Dec. 18. This is the first time the two ships conductedt a RAS together. Both ships are part of the coalition force supporting Operation Enduring Freedom.

 アンティータムのウェブサイトに掲載された活動記録を見ると、同艦がテロとの戦いではあるものの、アフガニスタン作戦にはまったく関係のない任務に就いていており、OEF-MIOの活動区域の外にいたことが分かります。

 同年7月26日に、アンティータムはカール・ヴィンソン戦闘群の一部として派遣されました。9月11日にはアラビア湾を通過。同月15日、ミサイル駆逐艦オカーン(DDG-77・アーレイバーク級)と共に、ホルムズ海峡を抜けて北ペルシャ湾でのMIOに従事するために、戦闘群から切り離されました。そして、イラクに出入りする125隻の船舶を石油その他の物資の密輸を監視するために調査しました。11月には、タワラ級強襲揚陸艦ペリリュー(LHA-5)と共に、カタールで開催された世界貿易機関の年次総会の防空任務につきました。11月17日、アンティータムはインドのムンバイ(Mumbai)に向かうために出発しました。ホルムズ海峡を通過する際、駆逐艦ペーターソン(DE-152)から落水した2名の隊員の捜索活動を2日間行いますが、捜索は失敗に終わりました。12月15日、アンティータムはオカーンと共にムンバイに到着し、寄港中は艦を公開して、記者会見を開き、最終日にはインド海軍の代表者やその他のVIPを招いてパーティを開きました。同月18日、アンティータムは出航し、シンガポールに寄港した後にハワイに向かいました。

マップは右クリックで拡大できます。

 「はまな」はアンティータムに帰り道の燃料を提供したのです。また、アンティータムがその前に行っていたのは、イラクに出入りする船の監視と国際機関の警備活動であり、アフガニスタン作戦とは無関係です。海軍の常識から言うと、帰還の燃料であっても提供するのが筋です。航海中はすべて任務と考えるのが海軍だからです。ここから、インド洋でテロ活動に従事する艦艇に限って給油するというイメージは最初から成り立たず、信じる方が間違っていることがお分かりになると思います。

 しかし、これは日本の国民感情には納得いかないでしょう。アンティータムはムンバイで補給できたはずだと考えられるからです。それに、石破防衛大臣の説明では、任務の途中で港に戻らなくてもよいように洋上で給油するという理屈ですから、そうではない場合もあることが証明されたことになります。石破氏は2001年1月から4月まで防衛庁副長官でしたが、2002年9月に防衛長官になるまでは、防衛庁の外にいました。この時期のことは知らない可能性があります。さらに言うと、ムンバイからシンガポールに向かう船に給油するには、OEF-MIOの範囲からも相当に離れた場所に行く必要があります。米軍艦船はインド半島とモルジブ(Maldives)の間を通って東進するのが普通ですから、ムンバイからラカジブ海(Laccadive sea)に向かう海域に進出したと考えられるからです。テポドン2号の時に防衛庁が発表した地図もあてになりませんでしたが、今回もまた類に漏れないようです。

 こうした形での給油は、他にもあると考えられます。時間がないので、これ以上はできませんが、少し調べただけで、これくらいのことが分かるわけです。米海軍はテロ特措法による給油をアフガニスタン作戦だけに使えると理解しておらず、テロとの戦いのためなら場所の制限はないと考えているのです。




「MSO」について
海上治安活動を意味する「Maritime Security Operation」の略。イラクではペルシャ湾で行われた作戦を「Maritime Interception Operation」、アフガニスタンではインド洋で行われた作戦を「Maritime Interdiction Operation」と呼んでいます(略称は共通です)。MSOはこれらの総称とされています。(元に戻る


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