米軍ヘリ墜落は対空ミサイルが原因

2007.1.24
同日10時20分修正



 military.comによれば、先週土曜日にバグダッド北東部で陸軍のブラックホーク・ヘリコプターが墜落し、13人が死亡した事件は、撃墜によるものであることが明らかになりました。

 事件は未だ調査中ですが、現場から携帯型対空ミサイルのチューブが発見されました。アルカイダとつながりがあるスンニ派の武装勢力は月曜日に犯行声明を出しています。昨日は民間軍事会社のブラックホークがスンニ派の地区で撃墜され、5人が死亡したという報道がありました。これらの報道から分かるのは、スンニ派武装勢力はフセイン政権時代のものか、最近入手した地対空ミサイルを持っているということです。

 また、ワシントン・ポストによれば、米軍はこの事件を調査中としていますが、目撃者によるとブラックホークは地上から機銃掃射を受け、操縦士と副操縦士の片方か両方に命中したために墜落したとのことです。ブラックホークは銃撃くらいでは墜落しないといいますから、この推定は納得できる範囲にあります。

 とにかくも、ソマリアのようにRPGで撃墜するのではなく、誘導型のミサイルを持っていることが明らかになったのです。これで、増派した米軍が空陸一体の作戦を行うことが難しくなりました。無人偵察・攻撃機を使う手はありますが、ヘリコプターほど柔軟に対応できませんし、なにより兵士を運べません。敵の意表を突く場所へ兵を降ろすことができなくなったのです。これは地上部隊の戦術が旧式のものに近くなることを意味します。

 いま、米議会ではイラク増派に関する議論があれこれと続いています。military.comによると、デビッド・ペトラエス中将はこう証言しました。「イラクでは大変な状況です。費用は高騰しています。簡単な選択肢はありません。進路は極めて困難です…しかし、困難は希望がないということではありません」。こうした発言を、まだ望みはあると思うのは誤った考え方です。太平洋戦争前に、山本五十六連合艦隊長官が近衛文麿首相に「是非にやれと言われれば、1年や1年半は存分に暴れてご覧に入れます。 しかしそれから先のことは、全く保障出来ません」と答えたといいます。これを勝算があると聞くべきか、開戦を断念すべきだと聞くべきかは、その後の歴史を見れば分かります。軍人は戦争を行いますが、戦うかどうかを決めるのは政治です。「やれ」と言われれば「できません」とは言えないのが軍人です。ペトラエス中将の発言は勝算なしと聞くべきなのです。それを「軍人は戦争の専門家だから」と、彼らに丸投げしたがるのが政治家です。ベトナム戦争でも米軍の将校たちは、「できません」と言えずに敗北を招きました。こうした軍事的判断に近道はありません。情報をできるだけ集め、見えていない部分にも配慮しながら合理的で大胆な結論を導くしかないのです。しかし、世間は分かりやすい結論に飛びつきがちです。納豆でダイエットができると聞けば、人は納豆を買いに走るものなのです。

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