12月の米軍戦死者に見る特徴

2007.1.19



 昨年12月の米軍戦死者について分析をしました。globalsecurityの一覧表を元に、エクセルで集計してグラフ化したところ、顕著な特徴が出たので驚きました。

 まず、イラク全体では、バグダッドとアンバル州がそれぞれ3分の1程度を占め、残りの3分の1がその他の地域であることが分かります。これは予想の範囲内です。



 バグダッドとアンバル州の内訳には著しい違いがありました。バグダッドは8割近くがIED攻撃なのに対して、アンバル州はIEDは5%程度と低く、7割以上が戦闘中に何らかの理由で死んでいるのです。「敵対行動」と「活動中死亡」ははっきりした死因が分からない戦死と考えられ、実際には似たような内容なのでしょう。また、ヘリコプター事故が多いのも、作戦が活発に行われていることの証拠でしょう。

 バグダッド市内では、昨年秋に増えた狙撃は減り、再びIEDが多用されているようです。そして、米軍にはそれを防ぐ手だてがないことが、死者の数から推察できます。



 昨年秋に増えた狙撃は減り、再びIEDが多用されているようです。そして、米軍にはそれを防ぐ手だてがないことが、死者の数から推察できます。しかし、アンバル州でもIEDは多用されていると思いましたが、いつの間にか銃撃による攻撃が増えています。これは武装勢力の拠点が増えたことを示します。アンバル州での武装勢力の掃討は、これまで何度も行われており、去年の夏も大々的にやっていますが、その結果がこれなのです。現地の海兵隊は現在の戦力では抑えきれないと報告もしており、そうした状況がどんどん悪化していることが分かります。

 なお、今月の米軍の戦死者はかなり遅いペースで上昇していますが、これはバグダッドで武装勢力が一般市民に狙いを絞っているためで、いつもの自然な増減というべきでしょう。

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