情報が錯綜するソマリア情勢

2007.1.11



 ソマリア空爆に関しては、未だに情報が錯綜しているようです。military.comワシントン・ポストが、様々な情報を報じています。アメリカの空爆で、テロ容疑者のファズル・アブデュラ・モハンメッドが死亡したとソマリア高官が主張しました。ソマリア大統領の首席補佐官アブディリィザク・ハッサン(Abdirizak Hassan)は、アメリカから受け取った目標と成果のリストでは、モハンメッドが死亡したと書かれていると述べました。米国防総省は詳しい戦果は不明としています。Ras Kamboni周辺では、他に4つの攻撃が行われたと言います。ソマリア政府高官は、アメリカの小さなチームがソマリアとエチオピアに援助を与えていると言いました。しかし、米国防相高官は、このような規模の作戦を、地上で監視する兵士なしには行わないと主張し、そうした計画も聞いていないと言っています。アファマドゥの空爆は3日間行われ、64人の市民が殺害され、100人が負傷したという目撃者がいますが、彼の証言はまだ確認されていません。前述のハッサンによると、イスラム過激主義の副指導者アブディラマン・ジャナクォウ(Abdirahman Janaqow)も死亡したといいます。Independent紙だけは、特殊作戦軍がソマリア国境遠方を攻撃し、ハヨ村(Hayo)で死傷者多数を攻撃したことを米国防総省が認めたと報じています。

 アメリカとソマリアの言い分がまるで食い違っているところに不安を感じます。もし、米軍がアファマドゥで200人近い人々を死傷させたとすれば、それはクリントン政権時に起きたソマリアの部族長虐殺事件の再来であり、ブッシュ政権に回復不可能のダメージを与えるほどのスキャンダルになります。1993年、米軍はソマリア内戦の元凶であるアイディード将軍を逮捕しようとしていました。そして、将軍の内務大臣の邸宅に大勢が集まるという情報を入手しました。米軍の攻撃ヘリコプターが彼らの会合場所へ向かい、居合わせた50〜70名のソマリア人を殺害しました。しかし、その情報は誤っていました。その場にいたのは、アイディードを説得して国連の指示に従わせることを相談しようとして集まった部族長たちで、アメリカは最大の味方を自分の手で殺したのです。この事件で、ソマリア人は完全にアメリカに反目することになりました。今回、報じられたとおりの攻撃が行われたのなら、この時以上の失敗を繰り返したことになり、アメリカの介入は不可能になります。沖合に集めた艦隊も引き返させるしかないでしょう。こういうわけですから、この攻撃が事実なら今日行われる予定のブッシュ大統領の発表も延期せざるを得ないでしょう。しかし、今のところ、そうした情報はありません。また、モハンメッドの死亡を米軍が確認したのなら、やはり現場に兵士を降ろして死体を回収したとしか思えません。

 今の段階では、ソマリア政府から出る情報が不正確なのではないかと考えるしかありません。それは、この地域の安定についての不安材料にもなります。これほど話が噛み合わないのでは、ソマリア政府がうまく国を統治していけるのか疑問だからです。

ソマリア地図 右クリックで拡大できます。
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