ソマリアにガンシップ投入か?

2007.1.9



 navytimes.comによれば、アメリカがソマリアにAC-130「ガンシップ」を投入したとCBSニュースが報じました。月曜日にソマリア南端で基地を攻撃しました。しかし、イスラム武装会議に対してではなく、1998年にケニアとタンザニアでアメリカ大使館を爆破したアルカイダの複数のメンバーに対してということです。つまり、ソマリア政府を支援するための行動ではありません。戦果については明らかになっていません。

 ガンシップは輸送機C-130の側面に、榴弾砲、機関砲、機関銃を取りつけ、旋回しながら地上を攻撃する航空機で、地上にいる部隊に対して強力な攻撃力を持ちます。普通、こうした場合アメリカは、トマホーク・ミサイルで被害を出す恐れなしに攻撃することが多いのですが、ガンシップを投入した点が少々気になります。何かの理由でガンシップの方がよいと判断されたのは間違いありません。トルコで起きたように、目標を逸れたトマホークが住居の近くに墜落してソマリ人の反発を買うことを恐れたのかも知れません。トマホーク・ミサイルが目標を殺害することに失敗する事例があることから、目視しながら攻撃した方がよいと考えたのかも知れません。ひょっとすると、攻撃後、目標の容疑者を殺害したかどうかを確認し、遺体を回収するために、少人数の特殊部隊を降下させるため、目標の殺害と特殊部隊の支援を兼ねて使ったのかも知れません。リスクを考えると考えにくい線ではありますが、ガンシップを投入した理由としてはリーズナブルです。しかし、単に噂が広まってイスラム法廷会議に圧力を加えられるという理由で選択された可能性もあります。

 詳しいことは記事に書かれていませんが、おそらく、目標の基地は海岸線上かそこに近い場所にあり、ガンシップは沖合を旋回しながら攻撃したのだと想像します。内陸にガンシップが墜落して捕虜にでもなると、イラク新戦略を発表する直前のブッシュ政権にとってタイミングが悪すぎます。そんなタイミングでなぜ攻撃を行ったのかは、多分、情報を入手したからだと思います。ソマリアの一連の事件でこの地域から出る情報が増え、その中に手配のテロ容疑者がいることが分かったのでしょう。こうした場合、攻撃を遅らせれば遅らせるほど容疑者を取り逃がす可能性が増えます。このことは、アメリカはアルカイダとの戦いの中で嫌と言うほど経験しています。メディアは「なぜ、今?」という切り口で、イラク新戦略と結びつけたがったり、そうしたメディアの好みを知って、裏付けを与える怪しいジャーナリストや軍事評論家も世の中にはいるようです。しかし、こういうやり方は予想外の反応が起こり、狙ったとおりに効果を出すかどうかが分からないので採用されないものです。ガンシップなんか使わなくても、ゴルゴ13を1人送り込めば済むといったことを言う人をテレビで見かけますが、彼やジェームズ・ボンドのような人は虚構作品の中にだけ存在するものです。

Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.