イラク増派の脇で拡大する危険

2007.1.9



 ワシントン・ポストが、2006年のイラク人の市民と警察官の死者数は、前半の6ヶ月が5,640人、後半6ヶ月が17,310人で、異常な上昇を示したことを報じました。明日、ブッシュ大統領はイラク増派を発表する予定です。すでに、米政界からは反対の声があがっており、メディアも同様です。ナンシー・ペロシ下院議長は、増派したら予算を通さないと言い出しました。同じようにベトナム戦争で増派を決定したジョンソン大統領には相当な迷いの果ての決断だったといわれていますが、ブッシュ大統領は自ら進んで派遣しようとしている点で大きな違いを見せています。私は、明日の発表に何の期待もしておらず、注目もしていません。それがどんな結果を生むのか、いまさら考えるまでもないからです。イラク駐留多国籍軍のケーシー司令官を陸軍参謀総長に昇格させた人事は、ケーシーが増派に反対したからだという報道もあります。ファロン太平洋軍司令官を引っ張ってきたのも、あるいは門外漢の方が御しやすいためかも知れません。

 もっと重要な外交政策がアフリカで実行中です。同紙によれば、アメリカの外交官ジェンダイ・フレーザーが、アフリカ各国を飛び回って、治安維持のために軍隊を派遣するよう要請しています。ウガンダが1,500人を派遣すると約束しました。フレーザーはさらに他の国も回る見込みで、南アフリカ、ナイジェリア、ガーナ、ベニン、セネガルであろうと予測されています。記事は、早く対処しないと、ソマリアはカオスに戻ると警告していますが、私も同感です。国際社会はもっとこの事件に関心を示すべきです。

 これらのことが教える教訓は、本当に必要な時に効果的な軍事介入を行うという発想で、日々の戦略を考える必要があるということです。余計なところで失敗し、必要な時に思い切って動けないのは最悪です。これはたとえ注意していても達成できない難しい条件かも知れません。現在の失敗を過去に結びつけすぎかも知れません。しかし、そうだとしても、この教訓を無視することはすべきではないと考えます。

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