イラク増派兵数は最大4万人か

2007.1.5



 military.comによると、イラク増派の規模は、予想よりも大きくなる可能性が出てきました。その見積もりはメディアによって異なり、次のようになっています。

CNN 20,000〜40,000人
NBC 20,000人前後
CBS イラク=9,000人(即応部隊)
クウェート=11,000人(待機部隊)
マクラッチー紙 15,000〜20,000人(3〜4個戦闘旅団)

 
 大統領広報官によれば、ブッシュ大統領はまだ最終決断をしていません。これらの数字は、政府内の異なる情報源から得られたもので、様々な案が検討されていると推定できます。どの案が最適かと言えば、どの案も不適当です。最大40,000人を派遣したとしても、イラクの安定化は期待できません。結果に多少の違いが出るとしても、20,000を派遣した場合と大した差が出るとは思えません。バグダッドの警備が少し厳重になるだけの話で、テロは状況の変化に応じて姿を変え、結果として治安はさほど変化しないのです。また、治安権限をイラク政府にすべて渡して順次撤退した場合よりも、犠牲者は増えるでしょう。

 アメリカに必要なのは、武力をもってテロ撲滅に専心するのではなく、発展途上国への支援により、これらの国からの支持を増やすことでしょう。武装勢力が地元で支持されるのは、彼らが生活の向上に寄与するからです。アメリカがそれを上回る支援を行えば、武装勢力への支持は減り、活動場所を失うことになります。また、長年、イスラム国では、アメリカがイスラム教徒を改宗させようとしているという噂がまことしやかに流されてきました。こうした偏見を取り除く努力をしないと、テロ志願者は減ることはありません。そのためには、信仰心で凝り固まったブッシュ大統領では駄目で、新しい時代を象徴する人物がその座に座る必要があります。しかし、民主主義国の政治家は、自国民の支持を得ることには熱心ですが、外国の支持を得ることが重要だという発想は持っていません。外国の国民が選挙で自分に票を投じてくれるわけではないからです。下院の議長が史上はじめて女性になったとしても、このモチベーションを変えるまでの力はありません。このため、米議会も大統領の決定に対して大した注文もつけられず、凡庸な手段でイラクの支配を続けることになると予測できます。これが近代的な民主国家と戦争の間に生じる典型的なパターンなのです。

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