本当に徴兵制はハイテク軍隊に不向きなのか?

2006.12.30



 昨夜、テレビのリモコンボタンを押している内に「太田光の私が総理大臣になったら...秘書田中。」が映り、少しだけ見ました。「憲法9条を世界遺産にする」という無茶なマニュフェストの議論の中で(笑)、元防衛庁長官の石破茂氏が「徴兵制はハイテク兵器の時代にはそぐわない。半年や1年、軍隊にいてもらっても、戦車も戦艦も動かせない」と言いました。(この発言は憶えているとおりに書いたつもりですが、多少不正確かも知れません)

 石破氏の発言の特徴は、関連性が薄いことを前提として議論をすることだ、と私は以前から感じていますが、この発言もそうです。ハイテク兵器と徴兵制には直接的な関連性はなく、兵役期間が短いとローテク兵器しか扱えないとは言えません。

 北朝鮮軍の徴兵期間は他の軍に比べると非常に長く、現在は10年間といわれます。2005年までは、なんと13年間でした。では、北朝鮮軍は超ハイテク軍隊でしょうか? 陸上自衛隊は2年、海上・航空自衛隊は3年が任期で、以後は2年ごとに任期が延長できる制度ですが、ハイテク兵器を山ほど持っています。アメリカは今でこそ志願制ですが、徴兵制度に切り替える必要が生じた時に備えて、その準備はしています。ハイテク兵器の総本山の米軍が、石破氏に言わせるとローテク向きの徴兵制度を、後ろ手に隠し持っているわけです。理由を兵器に何でも結びつけてしまうところが兵器マニア・石破氏の欠点です。

 そもそも、半年〜1年間という短い徴兵期間は聞いたことがなく、この数字を引き合いに出した理由が分かりません。意図が分からない発言は議論を混乱させるだけです。もっとも、この種の番組は議論が混乱させた方が人気が出るようですから、番組としては構わないのでしょう。面白い絵が撮れれば評価されるのがテレビの世界です。ただ、元防衛庁長官が言うことには信憑性が生まれます。多くの人が誤った知識を無条件に信じてしまうことは問題です。そう思うので、ここで指摘しておきます。

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