エチオピアがモガディシュを包囲

2006.12.27



 すでに国内でも報道されていますが、エチオピアはモガディシュの近くまでに迫っているようです。

 クリスチャン・サイエンス・モニターの記事によると、エチオピア軍機は爆弾だけでなく、ミサイルも使っている模様です。記事を書いた記者はモガディシュ近郊のジョワル(Jowhar)におり、そこが戦場になっている模様です。ジョワルは約30,000人の町です。(記事中の地図を参考ください)

 エチオピアがソマリアを攻める場合、南部にある2つの川(Webi JubbaとWebi Shabeelle)沿いに下っていくしか手がなさそうです。大きな町はこれらの川に沿っており、この川の流域を押さえれば、ソマリアは支配下におけます。今回の報道で、エチオピアがベレトゥエインを経て、ジョワルに迫っているのは、ごく常識的な判断による動きだと言えます。(下の地図を参照ください)

 ワシントン・ポストによると、米国務省は冷戦時代とは逆にエチオピアを支持することを決めました。予想通りの展開と言えるでしょう。戦況は、エチオピアのメレス・ゼナウイ首相によれば、3,000〜4,000人の兵士がイスラム法廷会議の「基盤を打ち砕き」「総退却」させつつあるとのことです。しかし、ゼナウイ首相は、1,000人以上のイスラム法廷会議を殺害し、3,000人近くを負傷させたとも述べています。これでは、イスラム法廷会議は少なくとも4,000人以上もいたことになり、攻撃に投入した4,000人のエチオピア兵と大差ないことになります。おそらく、イスラム法廷会議は拠点ごとに分散して配置されており、それぞれを4,000人の兵数で優勢を保って攻撃し、各個に撃破していったのでしょう。ゼナウイ首相はエチオピア軍はモガディシュには入城せず、包囲を続ける模様です。今後は、イスラム法廷会議がいつまで首都で籠城を続けるかに焦点が移ります。イスラム法廷会議も、数カ所からの退却を命じたことを認めており、今後はあらゆる場所で戦いを続けると宣言しています。これはエチオピア国内でのテロ攻撃を含むと考えなければなりません。

 また、ソマリア暫定政府は、降伏したイスラム法廷会議兵士には恩赦を与える方針です。この動きは歓迎すべきで、アメリカの捕虜の取り扱いの悪いイメージを払拭するものであることから、国際社会がソマリアを支援するのを容易にするでしょう。この地域をテロの温床にしないためにも、今後の対応が非常に重要になってきます。改めてこの地域について勉強し、対策を考えてみる必要を感じます。

CIAが2002年に製作したソマリアの人口分布図
人口レベルの凡例は、上から「中程度」「過疎地帯」「無人地帯」

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