パウエルがイラクへの増派に反対

2006.12.18



 様々な意見が飛び出し、ブッシュ大統領が増派を検討しているらしい時に、コリン・パウエル氏が増派に反対する意見を提示しました。元国務長官の彼は、未だに政治的な判断が幅を利かせている状況にうんざりしているのかも知れません。また、ワシントン・ポストの記事を読むと、国内で報じられていないブッシュ政権のイラク政策への評価がよく分かり、背筋が寒くなりました。

 やっとまともな軍事的な見解が聞けたという気がします。増派せず、イラクの治安責任をすべてイラク政府に渡すという発想は、最もよい結果を生むと考えられます。ブッシュは長期間の増派を考えており、民主党は短期間の増派なら賛成だと言います。しかし、この増派は期間がどうであれ何の意味もありません。対策を取ったと錯覚させることで政治家の満足感を増やすものの、現場の兵士の危険は増します。そして、治安状況には何の改善も見られないでしょう。まずい戦略だと分かった時は、格好が悪くても逃げ出すしかありません。逃げるのが早ければ早いほど損害は少なくて済みます。それができないのが今のブッシュ政権です。

 このインタビューは重要なので、全文を掲載します。これをよく読んで、じっくりと考えて欲しいと思います。



 元国務長官のコリン・L・パウエル氏は今日、彼がイラクの「内戦」と表現するものにアメリカは敗北しつつあり、米軍兵士の増派がこの状態を改善するとは確信できないと述べました。そのかわり、彼は、できるだけ早くにイラクの治安責任をバグダッドの政府に返し、来年の中期までに米軍の撤退を開始する新戦略を要請しました。

 パウエルのコメントは、この問題での長きにわたる公の場での沈黙を破り、彼を政権に対立する立場に置きました。ブッシュ大統領は、ジョン・マケイン上院議員(共和党、アリゾナ選出)やその他の議員が求めるのと同様、イラクに15,000〜30,000人の兵士を現在の140,000人に加える「急増派」と、軍高官が大統領と先週の会議で求めた、米軍を武装勢力と戦うことから主にアルカイダ・テロリストの掃討へ焦点を合わせる方向転換を含む新しい軍事戦略のオプションを考慮中です。

 しかし、ブッシュはイラク研究グループの緊急的な結論と部分的な撤退を来年開始するよう条件を設定する提案を拒否し、イラクの武装勢力は内戦ではないと断言しました。

 「私はベーカー氏とハミルトン氏のアセスメントには同意する」とパウエルは述べ、研究グループのリーダー、ジェームズ・A・ベイカーとリー・ハミルトンを引用しました。イラクの状況は「重大かつ悪化しており、我々は勝っておらず、負けつつある。我々は敗北はしていない。そして、いまはこの状況を変えられる戦略を配置し始める時です」

 CBSの番組「フェイス・ザ・ネイション」で、パウエルは統合幕僚議長としての4年間を含めた35年間の陸軍のキャリア、ブッシュ政権の外交責任者としてのより最近で困難な在任期間からぐっと離れたように見えました。

 昨年、バグダッドを安定させようとした米軍兵士の急増派は失敗しました、と彼は言い、新しい試みはどれも成功したように思われません。「もし、誰かが兵士を増派しようと考え、私がまだ統合幕僚議長だったら、私は最初に…これらの兵士が成し遂げると考えられる任務は何か、本当に達成可能なものは何か、我々はそれを成し遂げるのに十分な兵力を持っているのか…ということです」。

 イラク軍の米軍顧問を増やすべきだという中央軍司令ジョン・アビザイド大将には同意しますが、「遅かれ早かれバトンを渡しはじめ、イラク人に治安を手渡し、米軍を撤退させ始める必要がある。私は来年中期の適時に起こすべきだと考えます」

 兵士を増派するいかなる決定も下す前に、「私は、兵士が行く理由は何か、期間はどれくらいかを明確に理解しなければならないと望みます。そして、別の問題として…本当に追加できる兵士はいないことを明らかにさせます。我々がするであろうことは、そこにいる兵士の一部を引き留め、より長期に、漸進的または加速的に別の兵士を到着させることです」

 「これが急増派です。この急増波は維持できません」「現役の陸軍はほとんど破壊されています」とパウエルは述べました。イラクですら、「私の軍事的判断では」、陸軍と海兵隊は「規模を大きくする」必要があり、議会はそれらを安定させるために大幅に追加の予算を与えなければなりません。

 パウエルは研究グループの、政権はシリアとイランをグループとして、イラクの問題の解決のために交渉を開くという提唱にも同意しました。ブッシュとコンドリーザ・ライス国務長官は、シリアがレバノンにおける不安定化に関与することと、反イスラエル軍事勢力を支援することを止め、イランがウラン濃縮計画を中止しない限り、交渉を積極的に拒絶しています。ブッシュ政権は両国がイラクの武装勢力を援助していると非難しています。

 「彼らはイランとシリアから最低限の支援を得られるだろうか? あなたは彼らがそうすると賭けたのです」とパウエルはイラク人について述べました。「私はシリアやイランのどちらもイラクで我々を助けるという幻想を抱いていません。私はイラクで起こっていることはほとんどが彼ら自身が生んでいると確信もしています。資金、資源、兵器はイラクにすでにあります」

 「私はイランとシリアの政権を軽蔑していますか? 確かにそうです。同時に、軍隊と外交官のキャリアの中で、私は多くの人々を軽蔑してきましたが、まだ彼らと話をしなければなりません。

 ブッシュ政権の最初の任期中、パウエルはしばしば、アラブ・イスラエル和平プロセス、北朝鮮とイラクの外交政策問題の分野で、国防長官ドナルド・H・ラムズフェルド、チェイニー副大統領、大統領自身との意見の対立で負ける側になりました。200年のイラク侵攻では最終的に支持し、国連安全保障会に派遣されて、サダム・フセインがアメリカの安全保障への緊急的な脅威になる大量破壊兵器を所持したと述べて公共の確証を得る主要な役割を演じたものの、彼は「敵戦闘員」の政権の抑留と尋問方針に反対し、イラク戦終了後の計画の欠如と兵力に個人的な疑問を提示しました。

 ブッシュが彼の辞表を求めたあと、2005年1月に彼がひっそりとオフィスを離れたのは、先週金曜日のラムズフェルドの退任セレモニーと対照的でした。国防総省で行われた彼の退任セレモニーにはブッシュとチェイニーが出席しました。今日、「この国がかつて持ち得なかった最良の国防長官」というチェイニーの評価に同意するかと尋ねられ、パウエルは否定しました。

「ええ、それは副大統領の判断です」と彼は言いました。「私は優秀な国防長官を大勢知っています…しかし、この困難な時代にいる私たちすべての能力を判断するのは歴史です…私が考える歴史は、最終的にイラクで起きたことの結果として書かれるでしょう」。

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