イラク新戦略の発表が延期に

2006.12.13



 military.comによると、イラク新戦略の発表は来年明けにずれ込みそうです。ベイカー委員会の報告書は今年末までに新戦略をスタートするよう勧告していましたが、間に合いそうにありません。やっぱりか、という気がしました。これまでブッシュ政権内では、イラク政策がうまく行かなかった場合に備えて、次善策を用意していなかったのでしょう。そのような考え方は「不信心」につながり、議論する必要もないとされていたに違いありません。これが宗教的信念に基づく指導者の欠点です。宗教的信念ならアルカイダもブッシュに引けを取りませんが、アルカイダの方がブッシュよりは賢明のようです。

 賢明な戦略家なら、常に代替案をいくつか用意しておくものです。戦略家は自分の考えが絶対だと考えたり、固執したりはしません。軍事行動の規模が大きくなるほど、戦略の転換は難しくなります。その必要がないように見えても、常に案を用意しておく余裕が必要です。作戦計画については、次のような古典的な格言があります。「作戦計画を立てても、国境に軍隊が着くまでには変更が生じるものだ。それでも作戦計画は立てなければならない。なぜなら、作戦計画があれば変更が容易になるからだ」

 これではイラクからの撤退はうまく行きそうにありません。大統領が自分が混乱の原因を作ったことを理解せず、未だに勝利に固執しているのですから、抜本的な対策が取られるとは期待できなくなりました。

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