NATOサミット 異なる内外の報道

2006.11.30



 NATOサミットに関して、国内各メディアは良好な合意がなされたと報じています。新聞各社の見出しは次のようになっています。

  • NATO首脳会議閉幕 アフガン治安維持強化 日豪など域外国との協力確認 (産経新聞)
  • <NATO>アフガン現地指揮官の権限強化で合意 (毎日新聞)
  • アフガン派兵で結束示す=緊急時に部隊の活動制限解除 NATO首脳会議 (時事通信)

 しかし、military.comが掲載したAP通信の配信記事の見出しは「NATO アフガン派兵の役割分担で合意ならず(NATO Can't Agree on Afghan Troop Role)」です。

 この記事では、緊急時に他国の軍隊を支援することで、フランス、ドイツ、イタリア、スペインが合意に達したと報じています。これは国内メディアが主要な合意事項として報じています。しかし、AP通信の記事は、これらの4ヶ国は、イギリス、カナダ、オランダ、アメリカと共に戦うための軍隊を派遣することはないだろうとも書いています。ポーランド大統領レック・カジンスキーは、「サミットには大きな前進はありませんでした。すべての国が同様の決意を示したわけではありません」と述べました。イギリス首相トニー・ブレアは、NATOをもっと積極的にさせようとしたものの、望んだことはすべて実現されなかったと述べました。サミットはアフガニスタンに踏みとどまることでは総論で合意したものの、各論では一致できなかったのです。各国は総計で32,800人の兵数を維持する意思を確認し、3ヶ国(国名は非公開)が増派を申し出たと言います。増派しない方針のジャック・シラク仏大統領は、ヘリコプターと軍用機の派遣を約束しました。恐らく、フランスはこれで格好だけつける腹のようです。

 AP通信の記者は、具体的な決定の部分で意見の一致が見られなかったのだから、NATOサミットは実質的に合意に至らなかったと解釈し、国内メディアはそれで合意に達したと見たわけです。私がどちらの見解をとるかと言えば、AP通信の方です。アフガニスタンにおいても、NATO軍は成功の見通しを感じられず、すぐに足を抜くわけにもいかないので、現状を維持しながら様子を見たいのです。それがこのサミットの結果です。方向性は合っているようでも、参加者がバラバラの方向を向くのは国際会議では珍しくありません。

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